2022年12月 5日

企業のSDGs達成支援を行う国際NGOのワールド・ベンチマーク・アライアンス(WBA: World Benchmark)は、初の「ネイチャー・ベンチマーク(Nature Benchmark)」を発表した。自然に対して重大な影響がある8つの業界の約400社について、ポリシーや取り組みを評価し、その結果として、大半の企業が自然の重要性を認識していないと指摘した。調査対象は2023年までに1,000社に増やすことを目指しているという。

報告書によれば、今回対象となった金属・工業、建築・エンジニアリング、建設資材・備品、容器包装、製薬・バイオテクノロジー、タイヤ・ゴム、アパレル・フットウエアー、化学薬品の8業界にまたがる389社(うち日本企業は35社)において、自然および生物多様性に対する自社による影響について、科学に基づく評価を実施していたのはわずか5%であり、また、97%は2030年までにネイチャー・ポジティブを目指すことにコミットしていない。さらに、自社の事業が自然および生態系に依存していることを認識している企業は1%未満であった。

一方で、温室効果ガス排出削減の取り組みを実施している企業は約50%にのぼるものの、ネットゼロ達成には自然森林、水資源、生物多様性、大気質の保全が欠かせない。WBAのNature Transformation Lead のVicky Sins氏は、ネットゼロ達成には、自然界とそのコミュニティを守ることが必須であること、そのためには、企業が自社の事業活動が自然と密接に関連し、生物多様性へ影響を及ぼしていることを認識し、対処することが重要であり、その第一歩として、自社と自然とのかかわりを測定し、報告する必要があると述べている。

また、自然関連の事業においては、地域社会や先住民の知識や知見を取り入れ、生態系の効率的な保全のために、実証された取り組みを活用することが重要であるという。しかしながら現状では、先住民の権利を守るという明確なコミットメントを示す企業は13%未満に留まっている。さらに、先住民や地域社会に影響を与えうる事業では、企業は「制限なく、事前に、十分な情報に基づく同意」を確保し、その土地に関する決定には人々の権利を尊重する必要があるが、そのコミットを示す企業はわずか5%であった。加えて、環境及び人権擁護者への迫害や暴力抑止のポリシーを実施しているのは2%のみという結果である。

その他の調査結果は以下のとおりである。

・事業サイトを開示している企業は51%であるが、それが生物多様性のホットスポットまたは高い生態系の価値を有するエリアの近くであるかを明確にしているのは14%、また、近隣の絶滅危惧種の保護状況を開示しているのは7%である。
・森林破壊や湿地保護、生態系の転換の回避へのコミッメントなど、生物多様性の改善にむけた取組みを行っている企業は5%未満である。
・プラスチック削減を実施しているのは29%である。
・ネイチャー・ポジティブの政策を進めるには、ステークホルダーと協力することが重要である。ステークホルダーの関心を調査している企業は58%であるが、そのフィードバックを戦略に取り入れているのは8%にとどまっている。