2022年8月 8日

経済産業省は8月8日、「責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン(案)」を公表し、パブリックコメントを募集した。
昨今、企業の人権尊重の取組に関して、日本政府によるガイドライン策定への強い要望があったことなどをふまえ今年3月に、「サプライ チェーンにおける人権尊重のためのガイドライン検討会」が設置され、検討を経て今回、本ガイドラインの策定・公表に至った。

本ガイドライン冒頭では、策定の経緯と目的について「国連指導原則、OECD 多国籍企業行動指針及び ILO 多国籍企業宣 言をはじめとする国際スタンダードを踏まえ、企業に求められる人権尊重の取組について、日本で事業活動を行う企業の実態に即して、具体的かつわかりやすく解説し、企業の理解の深化を助け、その取組を促進することを目的として策定したものである。」と言及されている。

人権尊重の取組の全体像について以下のように示し、各論にて詳細を説明。人権デュー・ディリジェンス(DD)全体を通じての、ステークホルダーとの対話の重要性についても触れている。

また各段階においてステークホルダーとの対話が有益であるとしている。

1. 人権方針:
人権尊重責任に関する約束の表明

2. 人権DD:
負の影響の特定・評価
負の影響の防止・軽減
取組の実効性の評価
説明・情報開示

3. 救済:
負の影響から生じた被害への対応

人権DDは、その性質上、人権侵害が存在しないことを担保するものではなく、ステークホルダーとの対話を重ねながら、人権への負の影響を防止・軽減するための継続的なプロセスであるとしている。

本ガイドラインは法的拘束力を有するものではないが、企業の規模、業種にかかわらず、日本で事業活動を行う全ての企業(個人事業主を含む)が対象。本ガイドラインに沿って、自社・グループ会社、サプライヤー等における人権尊重の取り組みに最大限務めるべきであるとしている。

また経済産業省は、企業の実務担当者向けに、人権尊重の取組の内容をより具体的かつ実務的な形で示す資料を作成予定であるとし、本ガイドラインとあわせての参照を勧めている。

一方で日本における企業の実務面での取り組み支援を行う民間の動きとして、一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)が今年6月に発足しており、「国連 ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく非司法的な苦情処理の共同プラットフォームを提供し、 専門的な立場から会員企業の苦情処理の支援を行っている。


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