2022年2月15日

国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、グローバルなサステナビリティ情報開示基準(以下基準)の策定を進めている。企業は自らのためにも基準策定に全面的な支援を行うべきだとした記事が、ハーバード・ビジネス・スクール教授Robert G. Eccles氏と、サステナブル投資の第一人者Bhakti Mirchandani氏により、発表された。

記事によれば、ISSBには、投資家のニーズに焦点を充てた全ての既存の標準やフレームワークを統合するグローバルな基準の策定が期待されており、SEC(米国証券取引委員会)とEUがその基準を使用することが理想的とみられている。策定される基準は、企業のサステナビリティへの取り組みの進捗を示す信頼性の高い情報を提供するものであるため、企業がISSBの基準開発に早期に協力することは、自らのためにもなるという。

一方で導入コストに懸念を示す企業も多いとみられる。ISSBの並列組織である国際財務会計審議会(IASB)は設立当初からコスト・ベネフィット分析を基準策定時の中核要素としており、その経験や既に同分析を行っているSASB(サステナビリティ会計基準審議会)での実績は有用と思われる。企業にとって内部統制や測定システムの確立など初期投資は必要だが、経年を通して基準に対応する運用コストは下がると想定される。

Eccles教授らは、企業に対し、ISSBの成功を後押しし自らの前進の礎にするために次の2つの提案をしている。

1)基準の策定プロセスに積極的に加わること
プロセスで提案された基準に向け企業の事例が発表されれば、企業は投資家から建設的なインプットや批判を得ることができる。もしアドバイザリー委員への参加などの機会があれば、ぜひそうすべき。

2)基準を積極的に導入すること
基準の発行から各国の義務化までにはタイムラグの発生が不可避だが、義務化を待っている企業は後れを取る可能性が高い。一部の企業が早期にISSBの基準を導入し始めると、投資家は企業の業績を比較、分析するため他社に追随するよう圧力をかけることが想定される。基準に対応しないことに何のメリットもない。投資家は最悪の事態を予測し、それは未導入企業の株価に響くことになる。