2021年8月 9日

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、気候変動の自然科学的根拠をまとめた「第6次評価報告書(AR6)第1作業部会報告書」を公表した。報告書では、温室効果ガス排出の5つのシナリオを示し、どのシナリオでも2040年までに産業革命前からの気温上昇が1.5℃になると試算した。温暖化が急激に進んでいる原因は人間の影響によるものであることは「疑う余地がない(unequivocal)」と断定し、その変化は、今後数百年から数千年にわたり続くと警鐘を鳴らした。

世界平均気温は、本報告書で考慮した全ての排出シナリオにおいて、少なくとも今世紀半ばまでは上昇を続ける。向こう数十年の間に二酸化炭素及びその他の温室効果ガスの排出が大幅に減少しない限り、21 世紀中に、地球温暖化は 1.5℃及び 2℃を超える。排出量が非常に多い最悪のシナリオでは、2041年から60年の間に2.4℃、2100年までに4.4℃上昇するとした。

地球温暖化が進むと自然環境に大きな影響を与えるとして、例えば50年に1度であった熱波は、気温が1℃上昇している現状でも4.8倍、1.5℃上昇では8.6倍になるという。同じく、10年に1度であった豪雨は、1℃上昇で1.3倍、干ばつは1.7倍になっている。平均海面水位の上昇や氷河および氷床の消失も進んでおり、最善のシナリオでも1995年から2014年と比較して2100年時点で0.28から0.55メートルの上昇は避けられないとした。特に海洋、氷床及び世界海面水位における変化は、GHGの排出がネットゼロになった後も、百年から千年の時間スケールで不可逆的であるという。

各シナリオを比較すると近い将来では、他の自然現象の影響もあり、違いが見えにくいものの、2040年以降は排出量の非常に少ないシナリオでは、非常に多いシナリオと比較して自然災害や海面上昇などは大幅に減ることがわかっており、早急なネットゼロへの取り組み強化の必要性を訴えた。