2017年12月10日

英国の人権とビジネス研究所(IHRB: Institute for Human Rights and Business)は、ビジネスと人権に係る課題の中で、来る2018年に特に重要度を増すと考えられるもののトップ10を発表した。本リストの発表は今年で9回目を迎える。トップ10は下記のとおり。

・労働者の安全にかかるリスクの軽減:各国政府は規制強化により、企業や産業そのものがコスト面を理由として国外に流出する恐れを抱えている。一方で、多国籍企業やその請負企業を含め、企業は各地域の法や国際基準にかかるコンプライアンス遵守の責任を負っている。消費者もまた、低価格商品にはその背景に様々な人権侵害リスクが潜在しており、適正価格が労働者の人権擁護につながるという現実を直視する必要がある。

・崩壊している職業斡旋料の仕組みの改善:世界のサプライチェーンにおいて強制労働の要因となっているのは、職業仲介業者への斡旋料の支払いが移民労働者に課せられていることである。

・女性とLGBTI (レズビアン(L)ゲイ(G)バイセクシュアル(B)トランスジェンダー(T)インターセックス(I) )の人々に対する差別の撲滅

・社会の中にある不正への対処:紛争地域や脆弱なガバナンス下で操業している石油や鉱業、ガス関連企業は、何十年にもわたる訴訟や改善努力にも関わらず、未だ権利侵害の渦中にある。

・ビッグデータの活用:アクセスをより自由かつ安全にすること。

・企業と権利保有者間の調停メカニズムの強化

・ビジネスと人権にまつわる訴訟問題解決のための新しいメカニズムの構築

・重大な人権侵害についての民事訴訟を可能にすること:政府が企業を提訴しない(できない)場合の代替措置の拡充

・国内で企業を訴追できるようにすること:企業が他国で行った権利侵害行為について、本籍を置く国の法律で罰することが困難な場合も多い。市民社会は、政府に対し適切な国内法及び国際的な法律の枠組みによって企業を訴追できるよう求めていく。

・新たな国際的な手段を通じた人権救済のためのアカウンタビリティとアクセスの拡大:企業の人権侵害について、新たな国際的な手段による改善策が求められる。2017年には、オランダとフランスで、大手企業に人権デュー・ディリジェンスの報告義務を課す法律が制定されるなど、国レベルでの取り組みが見られるであろう。