2021年10月13日

国際エネルギー機関(IEA)は10月13日、「世界エネルギー展望2021(World Energy Outlook 2021)」を発表した。2050年ネットゼロ達成には、クリーンエネルギーへの転換に向けてさらなる野心的でスピード感ある行動が必要であると国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)に参加する各国政府に呼びかけるものとなる。
本レポートでは今後30年について次の3つのシナリオとその影響を分析。

2050年ネットゼロ排出シナリオ(Net Zero Emissions by 2050 Scenario)
IEAが今年5月に発表した1.5℃目標達成シナリオ。

現行政策シナリオ(Stated Policies Scenario)
各国政府がこれまでに実施してきたエネルギー・気候変動対策、および現在策定中の政策に基づくモデル。このシナリオでは、2050年までのエネルギー需要の純増分のほぼすべてが低排出源となるが、年間の排出量は現在のレベルのまま。その結果、世界の平均気温は上昇を続け、2100年に産業革命前の水準より2.6℃高い状況になった後も上昇を続ける。

誓約シナリオ(Announced Pledges Scenario)
COP26に向けて多くの国が新たに表明したコミットメントが期限内に完全に実施された場合のモデル。化石燃料の需要は2025年に頭打ちとなり、CO2排出量は2050年までに40%減となる。2100年の気温上昇は2.1℃ほどに保たれる。

ただ、ネットゼロシナリオと誓約シナリオでは結果に歴然とした差があり、ネットゼロ達成にはより野心的な誓約と、特に発展途上国のクリーンエネルギーへのさらなる投資が必要である。本レポートでは追加投資のプラスの側面を強調しており、ネットゼロを達成すると、風力タービン、ソーラーパネル、リチウムイオン電池、水電解装置、燃料電池の市場規模は2050年までに年間1兆ドルを大きく超え、現在の石油市場に匹敵する規模となる。クリーンエネルギー関連の雇用も2030年までに誓約シナリオで1,300万人、ネットゼロシナリオだとその2倍になると試算される。