2019年8月19日

日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、投資におけるESGの考慮を通じ、ポートフォリオの長期的なリスク低減やリターンの向上を目指しており、その取り組みを紹介する報告書である「2018年度ESG活動報告」を発行した。昨年に続き2回目となる。

GPIFのESGへの取り組みはハーバード・ビジネス・スクール(HBS)のケース・スタディとして紹介され、国際的にも注目されている。2019年1月に「年金基金は世界を変えようとすべきか?GPIFのESG活動(Should a Pension Fund Try to Change the World? Inside GPIF's Embrace of ESG)」と題するケース・ スタディ用教材をレベッカ・ヘンダーソン教授、ジョージ・セラファイム教授、ジョシュ・ ラーナー教授らが出版。GPIFがESGに取り組むようになった経緯や背景などを、具体的な活動とともにストーリー形式でまとめている。同教材はHBSのクラス教材にも採用され、今年4月にはGPIFの水野CIOがHBSの授業にゲストとして招かれ、学生たちと活発な議論が交わされたという。

報告書では、GPIFとして初めて「気候関連財務情報開示タスクフォース」(TCFD)の提言に沿った情報を掲載した。これに関連して、英国のトゥルーコスト(Trucost)に支援業務を委託し、その結果をまとめた「GPIFポートフォリオの気候変動リスク分析」も別途公表された。

Trucostのシナリオ分析によれば、GPIFのポートフォリオは、パリ協定で示された今世紀末までに世界の平均気温上昇を産業革命前に比べて2℃未満に抑える「2℃目標」への移行経路とは整合的でないという結果になった。GPIFは、ESGに関連する情報開示の取り組みは緒に就いたばかりであり、気候変動関連をはじめとしたESG情報の開示を促進していくことで、市場全体の持続可能性の向上に努めていくとした。


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