2021年5月11日

欧州のビジネススクールで初めてのビジネスと人権センターとして2019年に設立したGCBHR(Genova Center for Business and Human Rights)、国際商業会議所(ICC)、持続可能な世界経済人会議(WBCSD)は、ビジネスと人権に関する法制が拡大するなかで、自主的なイニシアチブの役割について探り、その内容のキーポイントを共有した。

国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)は、企業を含む第三者からの侵害(abuse)から人権を保護する国家の義務を示している。その実現に向けては、企業の人権尊重を後押しするよう、国別や国際的な対応に加え義務的・自主的の双方のアプローチを交えた「スマート・ミックス」で対策に臨むよう提案している。しかしながら、近年では、義務的な人権デューディリジェンス(mHRDD)が唯一の効果的な解決策であるという方向に議論がシフトしている。企業が事業戦略や活動、関係性の中でUNGPsの実務的な活用を確実にする、重要な見解や洞察、価値があるにもかかわらず、自主的で協働的なイニシアチブがしばしば見過ごされているという。

議論のキーポイント(一部)
1)「理由」:企業が自主的で協働的なイニシアチブに関与する理由には、他者との協働による解決策の試験的導入や規模拡大の機会を得ること、また規模が大きかったり、複雑だったりして単体では対応不可能なシステミックな課題に取り組むことや、企業やそのほかのステークホルダーとともに知識の共有や学習に加えキャパシティービルディングの構築を行う場が提供されることなどがある。

2)「要因」:自主的イニシアチブは、UNGPsを導入するにあたり重要な役割を果たしている。企業が意味のある貢献を最大限に生み出す可能性をもたらす要因として、基準やフレームワークに基づいた取り組みや独立認証のプロセスを提示などが特定されている。

3)「相違」:自主的で協働的なイニシアチブは、互いにそれぞれ大きく異なる。例えば、イニシアチブは、それぞれが多様なセクター、商品、国、地域、人権課題に注力していることが多く、明確な違いが見られる。

4)「不可避」:個社やその他のステークホルダーが単独で取り組むには大きすぎる課題に対処していくためには、自主的なイニシアチブが不可欠である。一方で、過去10年間、人権課題は解決しておらず特にシステミックな課題の進捗は遅い。このことは、自主的なアプローチだけでは十分ではないことを示しており、義務化を求める声は大きくなっている。

5)「法制化措置の環境整備」:法制化措置は必要であるとともにそれだけでは十分でないことが経験として示されている。mHRDD は、システミックな課題に取り組み、企業が強固なHRDDアプローチを確立させ、人権尊重という責任を果たすために協働する環境があって初めて成立する。


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