2018年3月15日

経済的発展とESGへの配慮を統合した金融システムへの変換を目指す「国連環境計画・金融イニシアティブ(以下、UNEP FI)」は、9つの投資機関の協力のもと、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に基づく気候変動にかかる情報開示を、投資家として実践するパイロットプロジェクトを発足させた。本プロジェクトに参加する先進的投資機関は、カナダのAddenda Capital、英国のAVIVA、米国のRockefeller Asset Management等、6ヶ国の9機関で、運用資産総額はおよそ3兆米ドル規模にのぼる。TCFDのガイドラインに沿った開示を実践し、国連責任投資原則(PRI)に署名している1,900のメンバー投資機関も含め、より幅広い業界にTCFDの取り組みが浸透することを狙っている。

本取り組みに先立ち、2017年には銀行16社とUNEP FI間で同様の取り組みが開始されており、こちらは2018年第2四半期には報告書が公表される予定となっている。こうした取り組みに続くものとして、今回は投資機関によるパイロットプロジェクトが実施されることになった。気候変動によってもたらされるリスクや機会を評価するための分析ツールや指標も開発する。

スウェーデンの年金基金The Second Swedish National Pension Fund(AP2)は、最も早い段階でTCFDの提言にもとづく情報開示に向けた取り組みを開始した組織の1つで、2018年2月には勧告に対応した情報開示にこぎつけている。

他方、企業や環境関連団体のコンソーシアムで、企業の気候変動情報開示の標準化に向け活動しているClimate Disclosure Standards Board(CDSB)とCDPは、14ヶ国、1,681企業(11種類の産業をカバー)を対象に行った調査結果を発表。調査では、TCFDが提言している気候関連の4分野(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)について質問した。その結果、企業にとって、気候関連のリスク・ビジネスチャンスを認識することと対処することの間に「ギャップ」が存在することを指摘している。ほとんどの企業は気候変動がもたらす財務リスクを認識しているものの、企業がそのリスクに対して行動を起こすか否かは別問題である、としている。例えば、10企業あれば8の企業は執行役員レベルで気候変動にかかる課題を認識しているにもかかわらず、10企業のうち1企業の割合でしか経営層に気候変動課題の解決に報いる仕組みを用意していない、と指摘している。