2019年9月18日

運用資産総額約16.2兆米ドルに達する230の機関投資家が、劣悪なアマゾン火災に照らして、企業に緊急対応を求める書簡に署名した。アマゾン熱帯雨林の火災は、ブラジルとボリビアにおいて急速に進んでいる森林破壊が原因とみられている。アマゾンや北極圏など世界各地における森林火災の劣悪な状況は、世界気象機関(WMO)が先月報じているが、衛星データにおいて、2019年8月1日から24日の期間に約4,000件にも及ぶ火災を確認している。WMOによれば、干ばつより開墾による森林伐採が大きく関連しているという。

今回投資家により署名された書簡は、責任投資原則(PRI)と、セリーズによってまとめられており、「投資家には、受益者にとって長期的に最適な利益を生み出すというフィデューシャル・デューティーがある。気候変動対策や生物多様性の保護とエコシステムサービス強化といった森林の持つ重要な役割を認識している」と述べている。
同書簡への署名機関には、世界30カ国以上から最大級の投資家やアセットオーナー(全体の約3割)が含まれる。書簡では、企業に対し、財務的にも重要な森林破壊リスクへの対処を訴えており、自社事業においても世界に広がるサプライチェーンにおいても、市場リスクやレピュテーションリスクが考えられる。具体的な要求は以下のとおりである。

・各原材料に即した森林破壊ゼロポリシー(以下ポリシー)を導入・開示する。それは、計測可能で時間的目標のあるコミットとし、サプライチェーン全体と調達先地域を含むこと。
・サプライヤーがポリシーを順守しているかについて、透明性のあるモニタリング・検証システムを設ける。
・ポリシーの進捗状況を含むリスク・エクスポージャーとリスクマネジメントを毎年報告。

アセット・マネージャーであるStorebrandのCEOは、「農業サプライチェーンの効率的管理に一層注力することが急務で、森林破壊や生物多様性損失は環境問題だけでなく、我々投資家がもはや無視することはできないほど経済に重要な悪影響をもたらす」とコメントした。同社は2025年までに森林破壊に一切寄与しない投資ポートフォリオにするとしている。また、ボストン・コモン・アセット・マネージメントの責任者は、「投資家として、農業生産者から融資を行う銀行にいたるまですべてのバリュー・チェーンに渡り、我々の投資ポートフォリオ上でのリスクを見つけ出し対処する義務がある」とコメントしている。

今回書簡にサインした多くの投資家は、PRIとセリーズが主導する、南米の大豆と牛にかかわる企業に対する投資家の集団エンゲージメントのイニシアチブIISF(Investor Initiative for Sustainable Forests)にも参画している。