海外展開を加速させる手段としての現地スタートアップ連携
はじめに
グローバル化に伴い世界各地でスタートアップが台頭する中、日本企業が海外市場へ展開を成功させるには現地スタートアップとの連携が有力な手段の一つです。自社だけでは得られない現地の知見や革新的アイデアを取り込むことで、海外事業の成功率を高められます。本記事では、世界のスタートアップ事情、現地スタートアップ連携のメリット、連携方法、注目市場インド、成功のポイントを解説します。
世界のスタートアップ事情
世界各地で加速するスタートアップエコシステム
世界のスタートアップ・エコシステムはこの10年で急速に成長しました。各国でVC投資が拡大し、多数のユニコーン企業(評価額10億ドル超の未上場企業)が誕生しています。特に米国・中国・インドはスタートアップ投資額が世界トップクラスで、資金と人材が集まるハブ都市が形成されています。
出典:スタートアップ・エコシステムの現状と課題(内閣官房グローバル・スタートアップ・キャンパス構想推進室)
日本と世界のスタートアップ事情の比較
世界に比べ、日本のスタートアップ市場はまだ小規模です。ユニコーン企業数も米中やインドが数十社規模なのに対し、日本は数社程度にとどまります。それでも国内のスタートアップ熱は高まりつつあり、2024年の国内スタートアップ資金調達額は前年並みの約7,793億円を維持しました。大企業による出資やM&Aも活発で、政府の支援策も追い風となっています。
海外展開における現地スタートアップ連携の重要性
海外市場に進出する際、現地スタートアップと協業することには多くのメリットがあります。例えば次の点が挙げられます。
- 現地市場の理解: 現地スタートアップは自国の市場ニーズや消費者動向を熟知しています。彼らと組むことで、文化や規制の違いも素早く把握でき、製品・サービスの現地適応がスムーズになります。
- イノベーション創出: スタートアップは新技術や斬新なビジネスモデルの宝庫です。連携すれば自社にない革新的アイデアを取り込み、新たな製品・サービスを生み出せます。
- 人材・ネットワークの活用: 現地の優秀な人材や業界ネットワークにアクセスできます。人脈が広がれば販路拡大や信頼構築にも役立ち、ビジネスを円滑に進められます。
知っておきたいデメリット
一方で、現地スタートアップとの連携には以下のようなデメリットやリスクも存在します。
- 経営基盤の不安定さ:スタートアップは成長途上であるがゆえに、経営基盤が脆弱な場合があります。資金繰り悪化や方向転換のリスクも考慮が必要です。
- 文化・価値観の違い:スピード重視のスタートアップと、慎重な日本企業との間で意思疎通にギャップが生じるケースもあります。
- 知的財産・契約リスク:技術流出や権利関係のトラブルを防ぐため、契約内容の精査が不可欠です。
このように現地スタートアップとの連携は、市場参入のスピードを上げ、成功率を高める有効策です。一方、文化や経営スタイルの違いによる課題はあるため、これらのリスクを理解し、適切な管理を行うことで、メリットを最大化することが重要です。
連携候補の現地スタートアップを探す方法
日本企業が海外で現地スタートアップと知り合う主な方法として、次のようなものがあります。
- スタートアップイベント・ピッチコンテストへの参加: 参加を通じて、直接ネットワークを広げ、提携候補を見つけることが可能となります。
- 海外VC・投資家へのアクセス: 海外投資家とのネットワークを作ることで、現地スタートアップを紹介してもらい、その先の連携が可能となります。
特に注目すべきインド市場の可能性
海外展開先として近年注目されるのがインド市場です。インドは約10万社のスタートアップと100社以上のユニコーン企業を抱える世界有数のエコシステムで、スタートアップ投資額も米中に次ぐ規模です。またIT人材が豊富でデジタル分野の技術力も世界有数です。中でも南部のベンガルール(バンガロール)は「インドのシリコンバレー」と呼ばれ、グローバルIT企業や有力スタートアップが集積しています。開発拠点を置く日本企業も増えており、インドで現地スタートアップと組む意義は大きいでしょう。
インドでのスタートアップ連携には「スタートアップHub」の活用が有効
インドのスタートアップとスムーズに連携するためには、スタートアップが集まる「スタートアップHub」の活用が効果的です。インド各地には、政府機関や大学、民間企業が運営するインキュベーション施設やアクセラレーターが多数存在しており、これらがスタートアップHubとして機能しています。
これらのHubは、現地スタートアップの集積地であり、有望な企業と出会えるだけでなく、ビジネスマッチングの支援や現地情報の提供、ネットワーキングイベントの開催など、連携を円滑に進めるためのサポートを提供しています。
例えば、日本企業は*ETRO(日本貿易振興機構)が運営する「グローバルアクセラレーションハブ」を通じて、インドの主要都市にあるスタートアップHubへアクセスすることができます。これにより、信頼できる現地パートナーを効率的に探すことができ、連携までのハードルを大きく下げることが可能です。
インドでのビジネス展開を検討する際は、こうした公的機関や現地のスタートアップHubを積極的に活用し、最適なパートナーとの出会いを実現することが成功への近道となるでしょう。
出典:JETRO HP https://www.jetro.go.jp/theme/innovation/gahub/
成功するためのポイント
最後に、現地スタートアップ連携を成功させるポイントを押さえておきましょう。
- 事前準備と目的の明確化: 自社の強みや不足リソース、海外展開で達成したい目標を整理し、「何をパートナーに求め、自社は何を提供できるか」を明確にします。
- 知財・契約面の取り決め: 技術や知財の扱い、出資比率など重要事項は事前に契約で合意し、トラブルを防ぎます。
- 柔軟でオープンな姿勢: 完璧を求めず、まずは小さく試す柔軟さが成功の鍵です。
まとめ
現地スタートアップとの連携は海外展開を加速させる有効な戦略です。世界的なスタートアップの潮流を踏まえ現地の力を借りれば、市場理解やイノベーションのスピードを高められます。特にインドのような成長市場では大きなチャンスを掴めるでしょう。リスク管理や準備は必要ですが、適切なパートナーと目的共有ができれば成功率は高まります。現地スタートアップとの協業は、日本企業のグローバル戦略における重要な鍵となるでしょう。
今回ご紹介した内容は、東京都が運営するNexTokyoのサイトでも動画でみることができます。ご興味があれば、ぜひ、動画も一緒にご覧ください。
【オンライン】Startup 15min Tips! #51 〜次の海外展開を加速させる一手に! 現地スタートアップとの連携のコツ~
https://www.nexstokyo.metro.tokyo.lg.jp/event/detail/249
https://www.youtube.com/watch?v=_6IVltutGWU
イースクエアでは、アジアやアフリカ等の途上国・新興国での多数のプロジェクト経験に加え、様々な民間企業でのビジネス経験を有するコンサルタントのノウハウや現地ネットワークをフル活用し、補助金獲得や補助金案件の運用を含めたお客様のニーズに合わせて、オーダーメイドで海外ビジネス展開をご支援しています。
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