こんにちは。イースクエア社長の本木啓生です。

今年1月、サーキュラー・エコノミーを推進するエレン・マッカーサー財団と
世界経済フォーラムが循環型のプラスチック生産・消費を提言する報告書
を発表しました。

同財団の代表であるマッカーサー女史は、2005年にヨットでのノンストップ
世界一周単独航海に成功し、当時の最速71日と14時間での記録を樹立します。
航海中は完全に密閉した世界の中で、限りある食料、衣料、燃料などのすべて
を最大限効率的にやりくりする中で、地球上で枯渇しつつ資源の重要性に気付
かされたそうです。

デイム(ナイトに相当する叙勲を受けた女性の敬称)の称号を持つマッカーサ
ー女史は、その後、自ら精力的に勉強し、循環型の経済システムを構築すべき
という結論に達し、2010年にエレン・マッカーサー財団を設立しました。

16世紀にヘンリー8世が建てた歴史的な建物の中にある本部は、ロンドンから
クルマで2時間ほど南下し、さらに本土から海峡を隔てたワイト島の最北端に
あるカウズというヨットレースで有名な小さな町に位置しています。

「新プラスチック・エコノミー―プラスチックの未来を再考する(The New
Plastics Economy: Rethinking the future of plastics)」と題した報告書
では、プラスチック製品や包装が我々の社会に不可欠なものである一方で、
プラスチックのバリューチェーンが現在大きな問題を抱えていることを指摘し
ています。

プラスチック包装材の86%が1回使用されるだけで廃棄されており、金額にす
ると毎年800億~1,200億ドルが無駄になっていると推計されています。また、
自然界に流出するプラスチックゴミの蓄積は深刻な状態となっていています。
2014年時点ですでに海洋に浮遊するプラスチックゴミの重量は魚の重量の1/5
にも上り、2050年には魚の重量を超えると予測されています。

報告書では、プラスチックがゴミにならずに循環する世界経済の構想を示し、
その実現のために必要な具体的ステップを説明しています。同財団はまた、
「新プラスチック・エコノミー・イニシアチブ」を立ち上げ、アクションに結
び付ける働きを始めています。このイニシアチブは、産業界の取り組みを加速
させ、各国の容器包装を始めとしたプラスチックに対する政策強化を促してい
く可能性があります。例えば、すでにいくつかの国ではレジ袋を禁止していま
すが、フランスでは今年9月に世界で初めて使い捨てプラスチック製カップや
皿を禁止する法律を制定しました(施行は2020年から)。

今回、マッカーサー女史による新プラスチック・エコノミーの動きは、強い問
題意識を持った人が世界を動かそうとしている一例としてご紹介しました。
環境問題が社会的なムーブメントまで昇華するためには、科学的な知見だけで
はなくマッカーサー女史のようなキーパーソンの存在が欠かせません。こうし
たキーパーソンの動きから、社会が向かう方向を予見することができると考え
ています。

関連情報(CSRコンパス・ライブラリ)
https://www.e-squareinc.com/library/compass/post_8.html

新プラスチック・エコノミーのWebサイト
http://www.newplasticseconomy.org/


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◇◆ 目次
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〔1〕注目CSRニュース -
     「FSG、コレクティブ・インパクトに関する論文を公表」

〔2〕セミナー案内 - サステナリティクス社東京オフィス開設特別セミナー
            「今、求められているESG情報開示」を開催

〔3〕セミナー案内 - 新任担当者・責任者にお勧め
            「CSR経営のための速習セミナー」を開催
          (キャンセル待ち受付中)

〔4〕さらなるCSRの社内浸透策をバックアップ - CSRコンパスのご紹介 -


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〔1〕注目CSRニュース -
     「FSG、コレクティブ・インパクトに関する論文を公表」
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このコーナーでは、企業のCSR担当者向け情報サイト、「CSRコンパス」
のトレンドウォッチ
http://www.csr-compass.jp/member/watch/
から注目ニュースをピックアップしてご紹介します。

今回取り上げるニュースは、「FSG、コレクティブ・インパクトに関する論文
を公表」です。

----<CSRコンパス「トレンドウォッチ」9月のニュース記事から転載>-----

FSGのマーク・クラマー氏とマーク・ファイツァー氏は、「共通価値のエコシ
ステム(仮訳)(The Ecosystem of Shared Value)」と題する論文をハーバ
ード・ビジネス・レビューに発表した。FSGは、「共通価値の創造(creating
shared value、CSV)」の概念を提唱した経済学者マイケル・ポーター氏と
マーク・クラマー氏が共同で設立した非営利コンサルティング会社。

CSVは企業の事業利益と社会的課題の解決を両立させる経営戦略で、近年この
アプローチを採用する企業が増えているが、企業の管理外にある活動環境が
共有価値創造の障害になることもある。同論文は、そうした障害を乗り越える
ために、企業が活動する市場をエコシステムと捉え、同じエコシステムの構成
員すべてを巻き込んだ「コレクティブ・インパクト(collective impact:
協働による社会的インパクト)」を創出する必要があると論じる。

同論文は、コレクティブ・インパクトによるCSVの例として、アフリカ市場開拓
を狙った肥料大手のヤラ社が、タンザニア政府や国際機関、民間企業、市民団
体など68組織を巻き込んで港湾、道路、鉄道など現地の輸送経路整備などを含
む農業インフラ創設を実現したケースを挙げている。また、ウォルマートが、
サプライチェーンの温室効果ガス(GHG)排出量2,000万トンの削減とパッケージ
コストの削減を目的に、パッケージに使う再生プラスチック材料不足の解決に
取り組んだ事例についても紹介している。同社は、他社と共同で、米国各地の
リサイクル・プロジェクトを支援する基金を設立している。

同論文はコレクティブ・インパクト創出に必要な条件として以下を挙げている。
・共通のアジェンダ
・評価方法の共有
・各構成員の得意分野を生かした活動
・緊密なコミュニケーション
・中立的な立場にある、専任の(事務局)担当者による基幹サポート

また、参加組織の動機に対する猜疑心や競合他社のただ乗り、投資を正当化す
る難しさなどが実現の障害となるとしている。

------<転載ここまで>------------------------------------------------

今回取り上げた論文で好事例として挙がっているヤラ社のケースは、アフリカ
における「市場の失敗」の原因を見直し、市場を「エコシステム」として広義
に捉え、全ての関係者の便宜を図ることで市場を最適化させた例です。

ここでの市場の失敗とは、政府による汚職や政策などの単独の働きが市場メカ
ニズムを崩し、機能不全に陥らせたという例でした。国民の食糧を確保するた
めの主要穀物の輸出制限はマーケットと投資の縮小を招き、政府の汚職は、港
における輸入貨物の滞留を招いていました。また道路整備は遅れ、農作物を貯
蔵するための冷蔵庫もなく、輸送インフラは整備されていませんでした。貧し
い農家の手には肥料が渡らず、また使うための知識もないという状況でした。

ここでヤラ社はまずステークホルダーを集結させることから始め、政府、NGO、
農家、企業などの68組織が1丸となり、協力して農作物生産・流通の一大イン
フラを作り上げました。農家に売上が落ちる仕組みもでき、その結果肥料が売
れるようになり、ヤラ社の現地での売上は50%アップしました。当社の本木が
昨年FSGの会合でヤラ社の本プロジェクト責任者にお会いした際に、その方が
強調していたのは、エコシステムが自律的に回っていくようにするため、ヤラ
社が意識的に前面に立たないように進めた、ということでした。

このようにヤラ社は自社のバリュー・チェーンの外にある事業環境も含めた改
革に取り組みました。一見遠回りですが、自社の事業を取り巻く「エコシステ
ム」が最適化すれば、持続可能なビジネスが実現するという好例でしょう。
最近では様々な分野で、異業種や同業他社間で連携する動きが目立っています
が、業界内の取り組みに留まらずどこまで視野を広げられるかが成否を分ける
ポイントになるかもしれません。


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〔2〕セミナー案内 - サステナリティクス社東京オフィス開設特別セミナー
            「今、求められているESG情報開示」を開催
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ESG調査・分析業界で世界をリードするサステナリティクス社が今年9月1日東京
オフィスの開設を発表しました。それに伴い、イースクエアでは特別セミナー
「今、求められているESG情報開示」を10月24日(月)に開催します。

日本版スチューワードシップコード、コーポレートガバナンスコードの導入、
そして、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が国連責任投資原則に署名
してから早くも1年が経過しました。その後、日本の主な機関投資家そして運用
受託会社が国連責任投資原則に署名し、ESG投資に向けた流れが定着してきてい
ます。

一方、サステナビリティに関する報告書作成に関しては、GRI(Global Reporting
Initiative)のガイドライン、G4から「スタンダード」への移行が間近に迫っ
ており、企業サイドでも、グローバル基準に沿ったESGへの取り組み・開示を戦
略的・継続的に実施していく動きが加速しています。

本セミナーでは、サステナリティクス社のCEOであるマイケル・ジャンツィ氏を
お招きして、

・ESG投資のメインストリーム化の底流には何があるのか?
・企業が開示するESG情報が長期投資家の銘柄選定・ポートフォリオ組成にど
 のような影響を与えているのか?
・世界の機関投資家が日本企業に求めるESGの取り組み・開示とは?

など、ESG情報開示・活用を主導する視点からご講演頂きます。

また、特別ゲストとして、GRI・グローバルサステナビリティ基準審議会(GSSB)
のメンバーである冨田氏(LRQA事業開発部門長・元ソニーCSR部長)をお招きして、

・G4ガイドラインから「スタンダード」への移行に向けた最新動向
・ESG情報開示の観点からみた「スタンダード」に準拠した報告書作成のポイント

など、これまでの日本企業でCSR推進に携わってこられたご経験を踏まえて
解説していただきます。

ESG情報開示、レポーティングの最前線でご活躍されるお2人の視点から、企業
に求められるESGへの取り組み・開示に関する最新動向・意義について理解を
深めていただける貴重な機会です。

ESGを担当されるCSR部門・IR部門の方はぜひご参加ください。

詳しくは下記のURLをご覧ください。
https://www.e-squareinc.com/news/2016/09/1024-esg.html

お申し込みは、下記のリンク先からお願いします。
http://bit.ly/2dk5O8s


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〔3〕セミナー案内 - 新任担当者・責任者にお勧め
            「CSR経営のための速習セミナー」を開催
          (キャンセル待ち受付中)
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戦略的にCSRを企画・推進するためのノウハウと実践力を身につける
  ― CSRを推進される責任者・実務担当者向けの研修コース ―


毎年恒例の「CSR経営のための速習セミナー」を10月20日(木)に開催します。

本セミナーは、CSR経営の全体像を1日(7時間半)でわかるように設計した速
習セミナーで、新任のCSR責任者およびご担当者、あるいは体系立ててもう一度
CSRの全体像をとらえ直したい方にお勧めです。

CSRの全体像や世界動向、CSR部門の役割について理解を深め、明日からの業務
にすぐに活かしていただけるプログラムとなっています。

レクチャー中心の理解編では、CSRを推進する上で知っておくべき基礎となる
知識や考え方を網羅的に習得するとともに、世界の先端情報を把握し、戦略的
にCSRを捉える能力を身につけていただけます。

これまでに120社以上、約200名の方にご受講いただき、「CSR担当者に必要な
ことを1日で凝縮して学べる」と大変高い評価をいただいている人気セミナー
です。

 対 象: 企業においてCSRを推進される方(責任者、実務担当者)
       ※新たにCSR関連部署に配属となった方に最適です。

 日 時: 【理解編】2016年10月20日(木)10:00~17:30

 定 員: 32名

 参加費: 37,000円(税込)
      ※TFNおよびCSRコンパス会員企業には割引がございます。
       詳しくはお問い合わせください。

詳しくは下記のURLをご覧ください。
https://www.e-squareinc.com/news/2016/08/csrcsr10.html

なお、大変申し訳ございませんが、このメールマガジンをお送りする直前に満
席になってしまったため、キャンセル待ちをご希望の方は、下記のリンク先か
らお願いします。
http://bit.ly/2dxhQZW


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〔4〕さらなるCSRの社内浸透策をバックアップ - CSRコンパスのご紹介 -
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次年度のさらなるCSR取り組みの強化に向け、キーパーソン向け研修や、広く全
社員に向けたCSR理解底上げを目的とした啓発活動の実施など、今から様々な社
内浸透策の企画・実施を進めていらっしゃるご担当者も多いのではないでしょ
うか。

CSR経営を後押しする、会員企業様向け情報サイト「CSRコンパス」では、CSR関
連のニュース記事や、先進事例のご紹介のほか、社員のCSR研修向けの資料提供
にも力を入れています。資料はWeb経由でいつでもダウンロードしてご活用いた
だけます。すぐに使える!定番コンテンツを以下にいくつかご紹介します。

◆レクチャー資料づくりに・・・ レクチャー素材
CSR部門の担当者が社内向けに基本的なCSR教育(レクチャー)を行う際にご活
用いただけるプレゼン資料のひな型です。パワーポイント形式、講師のための
原稿(スクリプト)付きです。
http://www.csr-compass.jp/member/box/lecture/

◆背景資料として・・・ 図表で見る環境・社会
世界の潮流を示すデータや図表をパワーポイント形式でご提供しています。
CSRに取り組む背景説明としてご活用いただけます。例えば気候変動関連の取り
組み推進に向けた勉強会では「地球の平均気温の上昇予測」「世界のCO2排出量
の推移」などの図表データで視覚的にも説得力ある解説をサポートします。
http://www.csr-compass.jp/member/box/graphics/

◆配布資料として・・・ CSR入門
CSRになじみのない方でも10分で理解できるよう、図解と平易な文章でCSRを解
説するシリーズ。1テーマにつきA4一枚で、「CSRって何?」「ステークホルダ
ーって誰?」といった素朴な疑問への答えから、「生物多様性」「児童労働」
「カーボンオフセット」などの個別テーマの解説までご用意しています。階層
別、また各部門とCSRの関わりをまとめたシリーズもあり、研修対象に合わせて
ご活用いただいています。
http://www.csr-compass.jp/member/box/introduction/

また、CSRコンパスでは、こうした研修向け素材コンテンツの他、以下のような
社内浸透策を検討されるCSRご担当者さま向けのコンテンツも掲載しております。

◆テーマ別実践ガイド「CSRの社内浸透を図る」
CSRの実務的なテーマを取り上げ、具体的な進め方について体系的かつ簡潔に
まとめた「実践の手引き」シリーズの1つ。社内浸透に関するノウハウが詰ま
っています。
http://www.csr-compass.jp/member/box/practice/

◆社内浸透事例 インタビューシリーズ
社内推進を積極的に展開している企業のご担当者に、その考え方やノウハウ、
効果などについてお伺いし、インタビュー記事としてまとめてご紹介。
http://www.csr-compass.jp/member/about/company.php


CSRコンパスに関するご質問などはイースクエア内CSRコンパス事務局までお気
軽にお問い合わせください。
http://www.csr-compass.jp/member/contact/


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【編集後記】
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いまアフリカのタンザニアで急成長中の携帯電話会社が「ハロテル」です。
タンザニア初の光ファイバー・ケーブルや基地局アンテナなどの通信インフラ
に積極投資していて、つながりやすさ、通信スピードの速さが評判で、契約者
数を急速に増やしているそうです。

タンザニアに出張する際にはこれまで日本でモバイルWi-Fiを借りてきていたの
ですが、9月に現地を訪問した際に、ハロテルの通信サービスを使ってみること
にしました。今回は地方には行かなかったのですが、ダルエスサラームでは極
めて快適に使うことができました。しかも、日本でモバイルWi-Fiを借りるのに
比べてコストは10分の1以下。もっと早く使っていればよかった、と言いたくな
りますが、何とハロテルがタンザニア市場に参入したのは昨年10月半ばのこと。
まだ開業して1年も経っていません。携帯電話契約件数は開業から3か月で100万
人、9か月後には200万人に達したそうです。これまで通信サービスが受けられ
なかったへき地にある1,500の村々にサービスを提供する、という野心的な目標
も掲げています。国土が広く、地方の人口密度が低いタンザニアではこれは大変
なことです。

意外なことに、このハロテルの母体はベトナムの国営通信会社、ベトテル(Vie
ttel)です。同社はタンザニアだけではなく、モザンビーク、カンボジア、ラオ
ス、といった新興市場に次々と参入して急成長中。4年ほど前に市場参入した
モザンビークではあっという間に業界1位となり、価格競争により国民の支払う
通信費は大幅に下がったそうです。新興市場の伸びもあり、最近の調査でベト
テルは携帯電話契約件数で世界トップ30に入ったそうです。

CSRコンパス9月のニュースで、タンザニアで成功した肥料会社のヤラ社を取り
上げましたが、インフラが未整備でデファクトスタンダードが定まっていない
新興市場ではこのベトテルのようなスピード感も忘れてはいけないようです。
(柳田)

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