2025年7月30日

経済協力開発機構(OECD)は、APT諸国(ASEAN Plus Threeのこと、東南アジア10カ国と日本、中国、韓国)におけるプラスチック汚染の展望に関する報告書「東南アジア・東アジアにおけるプラスチック問題の展望(仮訳)(Regional Plastics Outlook for Southeast and East Asia)」を発表した。

報告書によると、この地域の2022年の年間のプラスチック使用量は1億5,200万トンに達し、そのうち840万トンが自然環境に漏出したという。現状の政策を維持した場合、2050年には年間使用量は約2倍の2億8,000万トンに達し、自然環境への漏出量は68%増の年間1,410万トンになると警鐘を鳴らしている。

こうした事態を回避するために、プラスチックのライフサイクル全体を対象とした包括的な対策を講じる高強度(High Stringency)のシナリオを実施することで、使用量を28%削減し、リサイクル率を4倍以上の54%に高め、不適正処理廃棄物を97%削減できる可能性があるとしている。しかしながら、そのための負担は国により大きく異なり、当該地域全体ではGDPの0.8%に相当だが、ASEANの下位所得国では2.8%というより高いコストが発生すると予測されており、この格差を埋めるための地域内協力と国際支援の強化の必要性が浮き彫りになっている。

一方で、APT諸国の多くは、すでにプラスチック汚染に関する国家行動計画を採択しており、地域協力を強化している。リサイクル率は世界平均を上回っており、廃棄物の分別やポイ捨ての削減、製造業における再生材使用の拡大に向けた取り組みも進んでいる。

今後はさらに、各国の状況に応じた調整を行いながら、廃棄物収集・リサイクルインフラへの投資、規制枠組みの強化、投資を後押しする明確な政策メッセージ、および非公式な廃棄物処理従事者(インフォーマルワーカー)の統合支援などを通じて、効果的な対策を進めていくことが求められている。