プラネット・トラッカー、化学大手8社のネットゼロ移行の進捗を評価
2025年5月 8日
化学セクターは、世界の温室効果ガス(GHG)を最大6%排出しており、ネットゼロ経済への移行において主要なプレイヤーである。だが、長期にわたる 資産耐用年数、プロセス排出の多さ、複雑な世界規模のサプライチェーンといった、業界特有の課題に直面している。
プラネット・トラッカーは、世界化学大手8社の気候移行の取組みを評価した報告書『化学業界の教訓:気候行動の巨人(仮訳)(Lessons in Chemistry: Climate Action Giants)』を発行した。評価対象となったのは、BASF、バイエル、ダウ、インシテック・ピボット、エア・リキード、ライオンデルバセル、SABIC、東レの8社だ。本報告書は、体系的でエビデンスベースの枠組みを提供することで、化学セクターの投資家が、移行が進んでいる企業と遅れている企業を見極め、ハイリスクのエクスポージャーとエンゲージメント優先事項を特定し、ポートフォリオを1.5℃目標と整合できるようにすることを目的に制作された。
本報告書では、ここまで排出量の削減を実現できているのは、BASF、バイエル、インシテック・ピボットの3社、逆に目標設定に反して増加しているのはエア・リキードとダウだとしている。スコープ3の取り組み、ガバナンスと説明責任、政策への働きかけなど様々な側面から分析している。総合的にみて、1.5℃シナリオとの信頼できる全体的な整合性を示しているのは、ライオンデルバセルとインシテック・ピボットのみであり、両社はスコープ3に取り組み、的を絞った資本展開を行い、統合されたガバナンスを有しているとした。
投資家は、的を絞ったエンゲージメント戦略を通じて、企業の気候変動への取り組みを推進するうえで重要な役割を果たす必要がある。投資家に向けた提言として、排出量の推移と気候変動との整合性を評価モデルに組み込むこと、ガバナンスとスコープ3の開示について取締役会を積極的に関与させること、ネットゼロを可能にする技術とインフラに戦略的に資本を配分することなどを挙げている。