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インドの水・衛生・衛生行動 (WaSH)分野を牽引する新拠点:IIT パラッカド「グローバル衛生センター(GSCOE)」

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IITパラッカドとは

インド南部ケララ州に位置するインド工科大学パラッカド校(IIT Palakkad)は、インドに新設されたIIT(工科大学)の一つとして2015年に設立されました。学際的研究やイノベーションの推進、そして科学・工学を通じた地域課題への対応に重点を置く同校は、技術、農業、サステナビリティ分野における課題解決とともに、革新志向の教育の育成を目指しています。

GSCOEの設立背景と役割

IITパラッカドには、インドの水・衛生・衛生行動(WaSH)分野における比較的新しい拠点である「グローバル衛生センター・オブ・エクセレンス(GSCOE)」も設置されています。GSCOEは2022年にIITパラッカド技術イノベーション財団(TECHIN)の下で設立され、インド政府主席科学顧問室の支援を受けて発足しました。特に従来型の下水道網が十分に整備されていない地域を対象に、衛生システムに関する研究、試験、能力開発に取り組んでいます。このような取り組みは、不十分な廃棄物管理インフラや水不足といった課題を含む、インドが直面する深刻な衛生問題に対処するうえで不可欠です。

研究アプローチと技術領域

GSCOE の特徴の一つは、衛生を単なる個別のインフラではなく、より広い環境・経済循環の一部として捉える「システム的アプローチ」にあります。水管理、廃棄物処理、資源循環を相互に関連づけて検討し、資源回収や循環型社会、気候レジリエンスといった要素に重点を置いている点は、グローバルな衛生研究の潮流とも一致しています。 研究分野は、衛生バリューチェーンのさまざまな段階を対象としています。主なテーマは、非下水道衛生(Non-Sewered Sanitation:NSS)技術、し尿・汚泥管理、人工湿地(Constructed Wetlands)、バイオソリッド処理、熱処理技術、微生物燃料電池の応用などです。特に NSS は、下水道網が十分に整備されていないインドの地方都市や農村部において重要性が高く、分散型・コンテナ型の衛生システムへの関心が高まっています。また、乾燥・堆肥化・バイオガス化といったエネルギー・資源回収プロセスにも取り組んでいます。

実験・フィールド評価体制

GSCOE の設備面での特徴として、実験室とフィールド評価環境の双方を有している点が挙げられます。水質・汚泥・廃水分析を行うラボにより、技術の基礎評価や材質試験が可能であるほか、キャンパス内の「エンジニアリング・フィールドテストプラットフォーム」では、トイレや小規模処理ユニットなどの技術を実環境に近い条件で検証できます。このような二つの試験環境は、性能評価、標準化、普及前の技術改善に役立っています。

国内外連携と人材育成・政策支援

同センターは、インド国内外の多様な機関と協力関係を持っています。資金面では、衛生分野のイノベーション支援で知られるビル & メリンダ・ゲイツ財団の支援を受けているほか、IIT マドラス、Keystone Foundation、Toilet Board Coalition、IAPMO(国際配管・機械職員協会)などと連携して研究や研修、政策対話を進めています。

国際的な活動としては、2026 年7月9日~12日に開催される「国際水協会(IWA)非下水道衛生システム国際会議(ICNSS)」の共同ホストを同センターが務める予定であり、分散型衛生分野の研究者や実務者を世界から迎えることになっています。また、インド国内の水・廃棄物関連展示会にも参加し、産業界や行政との接点づくりを進めています。

海外企業との交流も始まっています。2025 年には、日本から大成工業(株)およびイースクエアの代表団が同センターを訪問し、NSS 技術や衛生システムに関する情報交換を行いました。これらの取り組みは、国際的な視点から衛生課題に取り組むための協力関係を模索する一例となっています。

技術開発だけでなく、研修や政策支援も重要な活動領域です。同センターは行政担当者向けのワークショップ、衛生事業者向けトレーニング、NSS 政策に関する支援などを通じて、インド国内の衛生改善に必要な知識と制度整備を支えています。

GSCOEとの協業可能性と今後の展望

GSCOE は、IIT パラッカドのサヒャードリキャンパス内における工学・環境科学・イノベーション分野との連携を生かし、エビデンスに基づく衛生計画の実現に向けた研究力と評価能力を提供しています。衛生が単なる廃棄物管理から、資源循環や気候レジリエンスを含む統合的な環境システムの一部へと位置付けられる中、同センターはインドおよび国際社会における知見の蓄積と技術検証に貢献する存在として、今後さらに重要性を増していくと考えられます。

イースクエアとしても、こうした動きを踏まえ、GSCOEのような研究・実証拠点との連携可能性を視野に入れながら、インドを含む新興国・途上国における衛生および資源管理分野での事業開発やプロジェクト形成に取り組んでいく方針です。今後は、技術実証、制度・市場調査、現地パートナーとの協業検討などを通じて、具体的な連携の可能性を探っていくことが期待されます。

イースクエアは海外展開・進出に係る補助・助成金申請支援も行っており、これまでに多くの支援実績があります。ご興味がある方は、以下よりお気軽にお問い合わせください。 

田村 賢一
この記事の監修者
田村 賢一記事一覧
2005年よりデロイト トーマツ グループにてCSR戦略、環境マネジメント、中小企業向け経営コンサルティング支援に従事。2010年イースクエア参画後はCSR・サステナビリティ事業に従事し、企業の戦略策定、情報開示、社内浸透などを支援。2015年に取締役就任後は海外展開・事業開発支援を主導し、中堅・中小企業向けに公的資金の活用、人財育成、新規事業開発等を支援。近年は中堅・中小企業の海外展開支援に継続して取り組んでおり、サステナビリティ・海外展開関連の講演活動も多数行っている。

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