目次
2025年11月6日に開催されたMorningstar Sustainalytics社(モーニングスター・サステナリティクス社)とイースクエア共催のセミナーでは、サステナブル投資市場の最新動向や、機関投資家がESGデータ、特にESG Risk Ratings(ESG リスク・レーティング)をどのように実際の投資判断に活用しているかなどについて、欧州の規制動向、グローバル調査、そして実務家の視点を交えて深く掘り下げられました。
本記事では、セミナーで語られた要点と、グローバルにおいて規制環境が厳格化し、地政学的な視点が加わる中、日本企業が資本市場との対話を進める上で押さえておくべきポイントを解説します。
セミナーの冒頭では、モーニングスター・ジャパン株式会社 代表取締役社長 チャン・ユーツン氏よりサステナリティクス社の沿革、Morningstarとの統合背景ならびにESG Risk Ratingsは現在1,000社を超えるクライアントによって「市場で広く使われる」ESG評価の中核であるとの位置づけと、投資家と発行体の「共通言語」になることを目指している旨、お話をいただきました。
- セミナーの概要と登壇者のご紹介はこちらをご覧ください。
このセミナーで分かったこと
- ESG投資は縮小ではなく「再定義」の局面へきている。欧州規制でグリーンウォッシュ排除が進み、テーマは「ESG」→「気候・トランジション」へ。
- 投資家が見ているのはスコアの点数ではなく、「財務マテリアリティ×経営戦略×移行計画の強度」。
- 外部評価は「点取りゲーム」ではなく、投資家と企業が並んで考えるための「共通言語(対話のフレームワーク)」になる。
世界のESG投資市場の最新動向
グローバル市場の動向:規制強化と「移行(トランジション)」
モーニングスターでサステナブル投資リサーチのヘッドを務めるHortense Bioy氏は、ESG投資市場が依然として拡大基調にあるものの、その資金の流れと戦略に変化が生じていることを指摘しました。
ESG市場は成長中、ただし資金の流れは変化
Bioy氏によると、サステナブル投資を目的とする世界のオープンエンドファンドおよびETFの資産総額は、過去7年間で約6倍に増加し、2025年9月時点で3.7兆ドルに達しています。この市場は依然として欧州が席巻しており、資産の約85%を占めています。日本において同じ定義における資産は1%にとどまりますが、「日本の運用会社がESGを考慮していない」という意味ではなく、ESGアウトカムを掲げたオープンエンドファンドやETF商品の比率が小さいという意味です。
しかし、2021年のピーク以降、欧州における投資信託などのプール型ファンドへの資金流入は鈍化傾向にあります。ただし、これはESG投資への関心の低下を意味するわけではありません。むしろ、大規模な機関投資家(アセットオーナー)が、柔軟なカスタマイズを目的として、資金をプール型ファンドからセグリゲート・マンデート(専用口座)へと移す動きが見られるため、ファンドの資金流入データだけでは市場の全貌を捉えられない点が指摘されています。
また個人投資家の88%がサステナブル投資に関心があり、特にアジア太平洋地域においてその傾向が強いといわれています。中でもZ世代やミレニアル世代の若年層において関心が高く、将来的にさらに投資が拡大する可能性を秘めています。
グリーンウォッシュ対策による「ESGファンド」の定義の変化
SFDRの分類が市場を整理(第6条・8条・9条)
欧州では、2021年のSFDR(サステナブル・ファイナンス開示規則)導入後、EU域内のファンドの約60%を占めるESGやサステナビリティ関連における投資を「サステナブル投資目的(第9条)」「環境・社会的特徴を促進(第8条)」「一般(第6条)」の3つに分類するようになりました。これに伴い、特に個人投資家保護のためのグリーンウォッシュ対策も厳格化しています。
2025年からは、ファンド名に「サステナブル」「環境」「ESG」などの用語を含むファンドに対し、化石燃料関連への投資に関する最低基準(特定の収益基準を超える企業への投資制限など)が導入されました。
ファンド名に“ESG”を入れるハードルが上昇
2025年からは、ファンド名に「サステナブル」「環境」「ESG」などの用語を含むファンドに対し、化石燃料関連への投資に関する最低基準(特定の収益基準を超える企業への投資制限など)が導入されました。
この規制強化の結果、少なくとも欧州のESGファンドの約28%が名称を変更(ESG関連用語の削除など)する事態が発生しています。 その一方で、市場では「ESG」や「サステナブル」という用語の代わりに、「気候」や「トランジション(移行)」といったテーマの人気が上昇しています。
なぜ今「トランジション」投資なのか
これは、経済全体の移行を支援する「トランジション戦略」の重要性が増していることの表れであり、欧州の規制当局もSFDR 2.0において、「トランジション」投資を明確に定義する枠組みを整備しようとしています。トランジション戦略の定義においては、SBT(Science Based Targets)や移行計画の有無などが焦点となりますが、その明確な基準はまだ策定途上にあります。
気候戦略の文脈でもトランジションについては割合が増してきており、GHG削減目標を掲げる企業に投資したいといった意向は根強くあります。
地域差について、欧州ではトランジション投資の割合が多い一方で、中国や米国など欧州以外の地域ではテーマ型投資に人気があり、「気候ソリューション」「クリーンエネルギー」「クリーンテック」「EV」などに対する投資により注目が集まっています。
ESGに組み込まれる「主権・安全保障」という新しい視点
また、地政学的な緊張の高まりを背景に、サステナブル投資の文脈が大きく変化しています。特に欧州では、「主権(Sovereignty)」「安全保障(Security)」「自治(Autonomy)」「レジリエンス(Resilience)」の観点からESGが再定義されつつあります。
防衛産業投資は“ESGの例外”ではなく議論対象に
軍事予算の増加に伴い、欧州のESG株式ファンドは防衛産業への投資を2025年に増加させています。ただし、サステナブル投資を行う投資家は、どの企業であれば受け入れられるのかを見極めながら投資先を選定しています。
AI・デジタル主権が投資テーマ化
米国やその他の国への技術依存を減らすため、欧州はAI戦略を推進しており、デジタル主権の確保が重要な投資テーマとなっています。
エネルギー安全保障=気候戦略の一部へ
クリーンエネルギー投資の潮流
EUはエネルギーにおける他国依存を減らして自主性を高めるため、化石燃料依存を減らして再生可能エネルギーへの大規模投資を行ってきました。2023年には、化石燃料への投資1ドルにつき10ドル以上をクリーンエネルギーに投資しました。これは、クリーンエネルギーと化石燃料の投資比率の乖離が世界的に最も高い水準です。このほか、2030年までに送電網の近代化に6,000億ドル超が必要などの論点を提示しています。
適応・レジリエンス強化の方向性
今後は、引き続き気候への適応(温暖化が避けられない前提での適応投資)といったテーマが強まると思われますが、「脱炭素=環境問題」だけでなく「国家安全保障・競争力」の文脈で再構成されつつあります。
機関投資家はESGをどう見ているか?調査から読み解くESG課題
投資家実務の焦点:「結論」ではなく「対話のフレームワーク」
続いて、モーニングスター・サステナリティクス社のESGソリューションズ部門で、ヨーロッパのマネージングディレクターを務めるCatalina Secreteanu氏が、継続的に実施している北米・欧州・APACの500社を超える機関投資家を対象とした調査結果(Voice of the Asset Owner Survey)を示し、投資家が重視するESG課題について解説しました。
地域差:ESGの重要性の認識ギャップが拡大
上記の調査(Voice of the Asset Owner Survey)によると、2025年時点で「ESGの重要性が過去5年で増加した」と回答する割合は、APACと欧州で依然として非常に高いことが示されました。特に中国では94%が「重要性が増した」と回答しています。一方で、米国では「ESGの重要性が減少した」と見る傾向が他地域に比べて強く、米国とその他の地域(APAC、欧州)の間でESGの重要性に対する認識のギャップが鮮明になっています。
投資家が重視する重要課題(E・S)
また、機関投資家が重要視する課題として、環境(E)と社会(S)においては以下の要素が上位でした。
| 分野 | 重要課題(Top 3) | 洞察 |
| 環境(E) | 1. 気候移行への準備 | 注目を集めています。企業が低排出経済への移行計画を持ち、実行できるかが焦点 |
| 2. エネルギー管理 | 上記同様に例年、注目を集めている | |
| 3. 気候変動に伴う物理的リスクと適応策 | 今年新たに追加されましたが、上位に浮上しました。極端気象への適応策が財務的な関心事として高まっている | |
| 社会(S) | 1. 労働慣行(従業員の健康を含む) | 例年通り注目を集めている |
| 2. 人権と地域社会との関係 | 同上 | |
| 3. ダイバーシティ&インクルージョン | 2023年のトップから順位は下がったものの、引き続き重要視されている |
今後注目すべきESGの4つの潮流
最後に、今後の潮流として、以下4つについて言及しました。
投資家は“紙の脱炭素”を避ける
近年、投資家は気候領域で緩和(mitigation)中心から、適応(adaptation)・レジリエンス重視へと軸足を移しつつあり、見かけ上の脱炭素(paper decarbonization)を避け、実世界の成果(real world outcomes)に繋がる取り組みを重視する流れが強まっています。また、IIGCCのNet Zero Frameworkが、投資家が気候リスクを追跡・管理するための信頼できるツールになっている点も示されました。
防衛関連のレッドラインは「非人道的兵器」
地政学的な出来事を背景に、特に欧州で防衛株に対する従来のスタンスが見直されていると指摘しました。ただし、多くの投資家にとっての「レッドライン」は、引き続き非人道的兵器(controversial weapons)の製造であり、これは欧州のタクソノミーの議論でも除外対象として扱われています。
規制簡素化で企業は楽に、投資家は逆に困る
2025年7月、欧州委員会がEUタクソノミーの報告負担を軽減する委任法(Delegated Act)を採択し、企業側の事務負担は減る一方で、投資家側はデータの入手可能性や一貫性の低下に適応が必要になる、と述べました。併せて、UK Stewardship CodeやUK IFRS、気候移行計画など、他の重要な制度見直しも進行中としています。
財務マテリアリティが再び主役になる
ESGについては「何がどのように財務へ影響するのか」を明確に説明・可視化する(マテリアリティを示す)ことが再び重要テーマになっていると話しました。関連して、Sustainalyticsのレポートでは、ESGリスクが低い企業は評判管理だけでなく、景気ショックなど不確実性が高い局面で、相対的に強い財務パフォーマンスや優位性を示す可能性がある点を提示し、今後もESGデータの有効性に関する研究を継続すると述べました。
投資家の視点:ESGスコアは「フレームワーク」

三井住友DSアセットマネジメント 責任投資推進室 プリンシパルである水野政紀氏は、アクティブ投資家としてESGスコアをどのように活用しているかの観点から、日本企業へメッセージを伝えました。
投資家が企業に期待する3点の要素
水野氏が「投資家として企業に期待する」と強調した要素は、以下の3点です。
- 本気のマテリアリティ(財務的重要性):真に重要なESG課題「財務的なマテリアリティ」に焦点を当てること
- 経営戦略とサステナビリティの一体化:サステナビリティ戦略が、事業の根幹や経営戦略と乖離していないこと
- 継続的な対話(エンゲージメント):一方的な開示ではなく、継続的かつ建設的なコミュニケーションが、投資判断に最も有益な材料となること
ESG評価は「結論」よりも結論に至るための“フレームワーク”
水野氏は、ESGスコアは投資判断の唯一の要素ではなく、企業価値評価の大部分は財務分析で決まるものの、ESG情報は判断の確信度を高めるために同様に中核的役割を果たすと話しました。投資家にとっては、ESGスコアという「結論」そのものよりも、その結論に至る「フレームワーク(方法論やロジック)」の方が重視されています。
ESG評価が低い企業に対し、アクティブ投資家は単純に投資から除外するのではなく、その評価の背景(実態が悪いのか、あるいは単に開示が悪いだけなのか)を精査し、対話を通じて実態の改善を促します。
Sustainalytics ESG Risk Ratingsを重視する理由
また、三井住友DSアセットマネジメントがSustainalyticsのESG Risk Ratingsを重視する理由として、以下の3点を挙げました。
- 財務的マテリアリティへのフォーカス:投資家の判断に役立つよう、方法論を大きく進化させた点
- 透明性:なぜそのスコアになったのかという根拠(ロジック、定量指標、定性的見解)にアクセスでき、企業側からのフィードバックや改善がしやすい点
- 代表性:グローバルで広く投資家に利用されているため、市場のコンセンサスを測る代理変数として機能する点
マテリアリティとESGスコアの「使い方」
ESGスコアを始めとする非財務情報は、それぞれの目的と特性に応じて適材適所で使い分けることがポイントになります。投資家としてはマテリアリティの高い論点に注目し、重要性が低い項目のスコアが悪いだけで過剰反応しないよう留意している一方で、企業側に対しては「何でも開示しろ」ではなく、経営資源配分の観点から優先順位をつけるべきだとよびかけました。
また、ESGスコアは企業と投資家が“隣に座って考える”ための共通言語になり得る、というメッセージで締められました。
Sustainalytics ESG Risk Ratingsとは?仕組みと押さえるべき点
最後に、モーニングスター・ジャパン、クライアントリレーションズ ディレクターの亀井万紀子氏から、ESG Risk Ratingsの設計思想とプロセスについての説明がありました。
評価の本質は「未管理リスク」
モーニングスター・サステナリティクスが提供するESG Risk Ratingsは、企業価値に影響を与える未管理リスク(Unmanaged Risk)の大きさを評価します。その算出は下記の要素に基づいています。

「ESG Risk Ratingsのスコア(末管理リスク)=エクスポージャー(潜在的リスク)−管理済みリスク」
| エクスポージャー(Exposure) | 企業が産業特性、ビジネスモデル、立地条件等に基づき、ESGリスクに晒されている度合い(脆弱性)。 |
| マネジメント(Management) | それらのリスクを軽減するための企業の取り組み(方針、管理システムなど)。 |
| 未管理リスク(Unmanaged Risk) | エクスポージャーから、企業努力によって管理できている部分を差し引いた、最終的なリスク。 |
スコアが高いほど高リスクと評価され、「Negligible(無視できる)」から「Severe(深刻)」までの5段階で分類されます。
MEI(重要なESG課題)に焦点を当てた評価
評価は、その産業特有の財務的に重要な課題であるMaterial ESG Issues (MEI)に焦点を当てて行われます。ガバナンス関連については、全産業共通で評価されます。また、MEIはサブインダストリーごとに選定され、その課題ごとにエクスポージャーとマネジメントが評価されます。
MEIの一覧

評価の透明性を確保するため、情報源は公開情報(企業報告書、規制当局への提出書類、ニュースメディア、信頼できるNGOレポートなど)に限定されています。また、評価の公開前には対象企業へドラフトレポートが提供され、企業側は参照情報の誤りや古さについてフィードバックする機会があります。
不祥事(Controversies)のモニタリング強化
企業不祥事(Controversies Research)については日々モニタリングが行われ、重大なインシデントが発生した場合は随時評価に反映されます。
2025年6月以降、サステナリティクスは不祥事を「財務的リスク」と「ステークホルダーへのインパクト」に分けて評価しており、ESGリスク・レーティングには主に財務的リスク側面を組み込んでいます。これにより、投資家は単なる評判リスクだけでなく、実際の財務的な影響も考慮した分析が可能になっています。
Q&A:日本企業の抱える課題とその解決策とは?

Q&Aセッションはイースクエア 代表取締役CEO 及川謙氏がモデレーターとして進行しました。以下2点のご質問に対し、登壇者よりご回答いただきました。
企業が特定したマテリアリティ(自由演技)はより重要だが、標準化された比較可能情報(“一律の”規定演技)も、類似企業と御社の違いを説明するために引き続き必要。両者を使い分けることになるであろう。
Bioy氏:
「スコア」と言っても階層ごとに方法論があり、フレームワーク(世界を見るレンズ)が重要。開示の標準化は、より堅牢で標準化されたデータを得られるので評価の質向上に資する。企業開示と評価は競合ではなく補完関係として並走するであろう。
特に欧州の制度(SFDR)などの文脈において、ESGスコアが悪いと「買えない」あるいは「買わない」投資家が一定数いる。他の主要ESG評価と比較した際に、Sustainalytics ESG Risk Ratingsは透明性が非常に高く、改善の手がかりが掴める点が、企業の実務上重要であると思う。
日本企業への示唆|“スコア対策”より「共通言語化」が鍵
“重要課題×経営戦略×投資家対話”が企業価値に直結、外部評価は点取りゲームではなく対話のフレームワーク
企業が資本市場との対話を円滑に進めるための重要なメッセージは、外部評価を「点取りゲーム」としてではなく「共通言語」として捉え、経営戦略とマテリアリティを一体化させて語ることだと言えます。
投資家は、形式的な開示(チェックボックスの充足)よりも、「実態」と「将来の見通し(移行計画の強度)」に関心を持っています。マテリアリティが高い領域で評価が低い場合、開示を整えるだけでなく、実態の改善に向けた本質的で具体的なストーリー(なぜその戦略が企業価値につながるのか)を継続的な対話の中で説明できることが、投資家との信頼関係を深め、企業価値の評価を高める鍵となります。
グリーンウォッシュ排除の流れは不可逆であり、トランジションとレジリエンスが次の評価軸
また、ESG投資の潮流は、規制強化と地政学的な要因により、実態を伴わない「グリーンウォッシュ」を排除し、「移行(トランジション)」と「レジリエンス」を重視する、より厳格で実世界へのインパクトを求める段階に入っています。
企業は、ESGスコアを自己評価と投資家との対話のための透明性の高いツールとして活用し、「本気の重要課題」を経営戦略そのものとして語ることが求められます。
このことからも、外部評価機関のスコアは、企業と投資家が横に並んで一緒に考えるための透明性の高いツールであり、これを活用することで、企業は経営リソースを効率的に配分すべき本質的な課題に焦点を当てることができると言えるでしょう。
イースクエアにおけるESG評価改善支援
イースクエアでは、Sustainalytics ESG Risk Ratingsの投資家向けデータベースを利用できる環境を構築しており、蓄積された評価データおよび評価手法に対する知見をもとに、企業のSustainalytics ESG Risk Ratingsのスコア向上のための情報開示支援をご提供しています。
詳しくは以下のページをご参照ください。
用語集
オープンエンドファンド
投資家の申込みや解約に応じて、ファンドの口数が随時増減する仕組みを持つ投資信託のこと。投資家は原則としていつでも購入や解約ができ、その際の価格は市場の需給ではなく、ファンドが保有する資産価値を基に算出される基準価額(NAV)によって決まる。日本で一般的に販売されている投資信託の多くは、このオープンエンド型にあたる。流動性が高く、少額から投資できるため、長期的な資産形成や積立投資に適している一方で、急激な解約が集中した場合には、運用上の制約が生じる可能性もある。
ETF (上場投資信託)
株式や債券、指数などに連動する運用成果を目指し、証券取引所に上場して取引される投資信託のこと。投資家は株式と同様に、取引時間中であれば市場価格で自由に売買できる。価格は基準価額(NAV)を基にしつつも、市場の需給によって変動する点が特徴。一般的に運用コストが低く、分散投資がしやすいことから、個人投資家から機関投資家まで幅広く利用されている一方、売買には証券会社を通じた手数料がかかり、短期的には市場価格が基準価額から乖離する場合もある。
セグリゲート・マンデート(専用口座)
特定の投資家のために資産運用会社が個別に運用を行う仕組みのこと。年金基金や保険会社などの機関投資家が主に利用している。投資信託のように多数の投資家の資金をまとめるのではなく、投資家ごとに口座を分けて管理・運用する点が特徴。運用方針や投資対象、リスク水準、ベンチマークなどを投資家の要望に応じて柔軟に設計できるため、資産構成や責任投資(ESG)などの制約を細かく反映できる一方で、一定規模以上の運用資産が必要で、コストや管理の手間が比較的高くなるという側面もある。
IIGCC (Institutional Investors Group on Climate Change、気候変動に関する機関投資家グループ)
気候変動問題に対応するために設立された、欧州を中心とする機関投資家の国際的なネットワークのこと。年金基金、保険会社、資産運用会社などが参加し、投資活動を通じて温室効果ガス削減や持続可能な経済への移行を促進することを目的としている。政策提言、企業とのエンゲージメント、気候関連投資の指針作成などを行い、パリ協定の目標達成を支援している。投資家が協調して行動することで、企業や政府に対する影響力を高める点が特徴。
Net Zero Framework(ネット・ゼロ・フレームワーク)
投資家が温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロ(ネットゼロ)にする目標に向けて、投資行動を体系的に進めるための指針のこと。主にIIGCCなどが中心となって策定され、ポートフォリオ全体での排出削減目標の設定、移行計画を持つ企業への投資拡大、排出削減が進まない企業へのエンゲージメント強化などを求めている。単なる投資除外ではなく、企業との対話を通じて実体経済の脱炭素化を促す点が特徴で、進捗の測定や情報開示の重要性も強調されている。
タクソノミー(Taxonomy)
環境や社会の持続可能性に貢献する経済活動を分類・定義するための共通基準のこと。特にEUタクソノミーが代表例で、気候変動対策などの環境目標に実質的に貢献しているか、他の目標に重大な悪影響を与えていないかといった観点から、活動を体系的に整理している。また、投資家や企業が「何がサステナブルか」を客観的に判断できるようにすることで、グリーンウォッシュの防止や資金の透明な循環を促す役割を果たしている。近年は金融規制や情報開示とも連動し、持続可能な投資の基盤として重要性が高まっている。
非人道的兵器(Controversial Weapons)
EUのサステナブルファイナンス・フレームワークにおいて、非人道的兵器には対人地雷、クラスター弾、生物兵器及び化学兵器が含まれる。これらの兵器の使用、保有、開発、移転、製造、備蓄は、EU加盟国の大半が締約国となっている国際条約により禁止されている。

