「自社が検討している海外事業は、グローバルサウス補助金の対象になるのか」「応募を検討したいが、採択を目指すために何を整理すればよいのか分からない」といった疑問をお持ちの企業も多いのではないでしょうか。
経済産業省の「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金(小規模実証・FS事業)」(以下、グローバルサウス補助金)は、グローバルサウス諸国における具体的な案件形成や受注・事業化を目的として、日本企業が行うFS(実現可能性調査)や小規模実証を支援する制度です。
当たり前ですが、グローバルサウス補助金は、制度上の要件を満たしていれば採択されるわけではありません。採択の可能性を高めるためには、現地の課題や顧客ニーズ、事業化の見通し、日本側へのメリットなど、いくつかの重要なポイントを押さえて案件を組み立てる必要があります。
令和7年度補正予算の一次公募では、238件の応募に対して65件が採択され、採択率は約27%でした。応募4件に1件程度しか採択されない、比較的厳しい結果となっています。
また、経済産業省は2026年8月28日、二次公募の予定を公表しました。二次公募への応募を検討している企業にとって、今まさに事業計画や申請内容を具体化しておきたいタイミングです。
本記事では、制度上の対象を簡単に確認したうえで、グローバルサウス補助金の採択を目指すために押さえておきたい7つのポイントをご紹介します。
二次公募は2026年10月2日開始予定
経済産業省が2026年8月28日に公表した情報によると、令和7年度補正予算のグローバルサウス補助金(小規模実証・FS事業)の二次公募は、以下のスケジュールで実施される予定です。
- 申請受付開始:2026年10月2日(金)12:00(予定)
- 申請受付締切:2026年10月23日(金)12:00(予定)
- 採択結果公表:2027年1月中旬頃(予定)
申請要件については、一次公募から大きな変更はない予定とされています。また、FS事業と小規模実証事業を合わせて80件程度の採択が予定されています。
公募期間は約3週間と限られています。二次公募への応募を考えている場合、公募開始を待ってから検討を始めるのではなく、対象国や事業内容、現地ニーズ、事業化の見通しなどをあらかじめ整理しておくことが重要です。
二次公募の最新情報については、経済産業省の「令和7年度補正事業(グローバルサウス未来志向型共創等事業)の二次公募の情報」および公募特設サイトをご確認ください。
グローバルサウス補助金の対象となる事業
まず、制度上の対象を確認しておきましょう。
グローバルサウス補助金では、ASEAN、南西アジア、中央アジア・コーカサス、中東、アフリカ、中南米、太平洋島嶼国などのグローバルサウス諸国を対象として、GX、DX、経済安全保障に関係するFS事業または小規模実証事業が支援対象とされています。
また、対象事業は「我が国のイノベーション創出につながる共創型」「日本の高度技術海外展開型」「サプライチェーン強靱化型」の3つの事業類型のいずれかに該当する必要があります。
FS事業の補助上限は1億円、小規模実証事業は5億円で、補助率は2分の1以内、中小企業は一定の要件を満たす場合に3分の2以内となっています。
制度の詳細については、関連記事「令和7年度補正予算 グローバルサウス未来志向型共創等事業(小規模実証・FS事業) 公募に向けた最新動向と準備ポイント」もご参照ください。
では、こうした制度上の要件を満たしているとして、採択を目指すためにはどのような点を押さえておく必要があるのでしょうか。
グローバルサウス補助金の採択を目指すための7つのチェックポイント
1.対象国と取り組みたい事業がある程度具体化している
「成長する東南アジア市場に進出したい」「アフリカで自社製品が売れるか調べたい」という段階では、対象国や顧客、具体的な事業内容がまだ定まっておらず、案件としては漠然としすぎています。
グローバルサウス補助金で対象となるのは、一般的な海外市場調査というより、個別具体的な案件の組成や事業化に向けたFS・実証です。
例えば、「インドの特定分野に自社技術を導入し、現地企業への販売事業を構築したい」「ベトナムの特定業界で設備導入を進めるため、現地で性能と経済性を検証したい」といったように、対象国、顧客、提供する製品・サービスについて一定の事業仮説がある方が、この制度を活用しやすくなります。
2.現地の社会課題だけでなく、顧客ニーズが見えている
グローバルサウス諸国には、エネルギー、環境、農業、医療、防災など、さまざまな社会課題があります。
しかし、社会課題があることと、自社の製品・サービスに対する顧客ニーズがあることは同じではありません。
例えば、水不足という大きな課題があったとしても、「誰が困っているのか」「現在どのような方法で対応しているのか」「既存の方法にはどのような問題があるのか」「自社の技術を導入することで何が改善するのか」といったところまで掘り下げて考える必要があります。
まだ分からない部分がある場合、それを現地調査によって明らかにすること自体はFSの重要な役割です。制度上も、相手国関係者のニーズや課題、市場規模、需要予測、競合状況などの調査がFSの対象として想定されています。
3.事業化した場合に「誰がお金を払うのか」を考えられている
社会課題の解決を目的とした事業で特に重要なのが、「受益者」と「支払者」を分けて考えることです。
製品やサービスを利用する人が、そのまま代金を支払うとは限りません。住民が受益者であっても、自治体や病院、農協、民間企業などが購入者になる場合があります。
「社会的に必要とされているから普及するはず」ではなく、事業化後に誰が顧客となり、どのような理由で対価を支払うのかを考えておくことが重要です。
FSを行う場合には、こうした価格受容性、商流、販売方法、採算性などを検証事項として設定することもできます。
4.GX・DX・経済安全保障とのつながりが明確である
令和7年度補正予算では、GX、DX、経済安全保障が対象分野となっています。
ただし、単に申請書の中に「GX」「DX」という言葉を加えればよいというものではありません。
例えばGXであれば、その事業によってどのようにGHG排出削減やクリーンエネルギーへの転換につながるのか。DXであれば、単にデジタル技術を利用するだけでなく、それによってビジネスモデルやサービスがどのように変わるのか。
自社の事業そのものと、本補助金が対象とする政策テーマとの関係を説明できるかを確認しておく必要があります。
5.相手国だけでなく、日本側のメリットも説明できる
グローバルサウス補助金では、相手国の課題解決だけでなく、日本国内産業の活性化、新市場の開拓、経済安全保障の確保なども制度の目的とされています。
そのため、「相手国にとって社会的に意義のある事業」であるだけではなく、事業が拡大した場合に日本企業にどのようなメリットが生まれるかという視点も重要です。
例えば、海外市場での売上拡大、日本国内での生産・雇用への波及、現地で得られたデータや知見の日本への還流、サプライチェーンの多角化などが考えられます。
相手国の課題解決への貢献だけでなく、「この事業が日本にとってどのような意義を持つのか」まで説明できることが重要です。
6.現地で事業を実行するための体制をイメージできる
応募時点ですべての現地パートナーが決まっている必要はありません。
特にFSでは、現地パートナー候補の調査、コンタクト、交渉なども対象となっています。
一方で、「最終的に誰と組んで、誰が製造し、誰が販売し、誰が設備を運営するのか」といった事業実施体制について、ある程度の仮説があることは重要です。
現地パートナーが決まっていないこと自体が問題なのではなく、事業化に向けて、どのようなプレイヤーとの連携が必要なのかが整理されているかがポイントになります。
7.FS・実証を通じて「何を明らかにしたいか」が明確である
最後に、特に重要なのがこの点です。
「補助金があるので海外展開を調べてみたい」のではなく、まず事業化に向けた仮説があり、そのうえで、「事業化するためには、この点がまだ分からない」という課題が明確になっていることが理想です。
例えばFSであれば、市場規模、規制、価格、競合、販売チャネル、パートナー、採算性などが検証対象になります。
小規模実証であれば、実際の使用環境での性能、運用性、耐久性、経済性、顧客評価などを確認することが考えられます。
制度上も、FSは案件組成段階で実行可能性や採算性等を調査するもの、小規模実証は実地に適用可能な段階にある技術・システム等について、有効性や経済性を確認するものと位置付けられています。
「海外展開したいから補助金を使う」のではなく、「事業化に向けて解消すべき不確実性があるため、FS・実証を行う」という順番で考えると、補助事業の内容も整理しやすくなります。
グローバルサウス補助金の申請前に見直したいケース
反対に、次のような場合は、すぐに申請を目指すのではなく、事業内容を具体化したり、補助金の目的との適合性や補助事業後の事業化の見通しを改めて確認したりする必要があります。
- 「海外展開したい」という構想はあるものの、対象国や顧客がほとんど決まっていない
- 社会課題は説明できるものの、事業として誰がお金を払うのか見えていない
- 研究開発や設備購入そのものが主目的になっている
- 補助金を利用すること自体が目的になっており、その後の事業化が十分に検討されていない
特に小規模実証については、研究開発支援や設備投資支援そのものを目的とした制度ではありません。
また、「補助金が取れれば実施するが、その後の事業化はまだ考えていない」という状態も注意が必要です。
グローバルサウス補助金は、補助事業そのものを実施することではなく、その先の受注・事業化を目的とした制度です。補助事業終了後にどのように事業を継続・拡大していくのかを、早い段階から考えておくことが重要です。
FSと小規模実証、どちらを選ぶべき?
大まかに整理すると、事業化できるかどうかを調べる段階がFS、実際の現場で技術やビジネスの成立可能性を確かめる段階が小規模実証です。
FSでは、市場、規制、競合、顧客ニーズ、事業採算性、パートナー、事業実施体制などを調査できます。一方、小規模実証では、実地に適用可能な段階にある技術やシステムを現地で使用し、有効性や経済性などを確認します。
FSと小規模実証の違いや、どちらを選ぶべきかについては、今後別の記事で詳しく解説します。
申請前に、事業計画の骨格を整理する
グローバルサウス補助金への応募を検討するのであれば、いきなり申請書を書き始めるよりも、まず次の5点をA4一枚程度に整理してみることをおすすめします。
- 対象国
- 現地課題と顧客
- 提供する製品・サービス
- FS・実証で確認したいこと
- 補助事業後の事業化イメージ
この5点がつながっていれば、補助事業で何を行うべきかもかなり見えやすくなります。
逆に、うまく整理できない部分があれば、そこが申請書作成以前に検討すべきポイントである可能性があります。
まとめ|採択を目指すなら、事業化までを見据えて考える
グローバルサウス補助金を検討する際、まず制度上の対象になるかを確認する必要があります。しかし、それだけで応募を判断するのは早いかもしれません。
現地に具体的な課題や顧客ニーズがあるか。事業化した場合に誰が対価を支払うのか。日本側にもどのようなメリットがあるのか。そしてFS・実証によって何を明らかにしたいのか。
こうした要素が一つの事業化ストーリーとしてつながっているかを確認することが重要です。
二次公募は2026年10月2日の受付開始が予定されています。応募を検討している場合は、公募開始を待たず、事業計画や検証すべき事項を整理しておくことをおすすめします。
イースクエアでは、海外市場調査、FS、現地での実証、パートナー探索、新規事業の立ち上げまで、海外展開・事業開発を一貫して支援しています。
「二次公募への応募を検討しているが、事業計画をどのように組み立てればよいか分からない」「採択を目指すうえで、自社の計画に不足している点を確認したい」といった段階でも、お気軽にご相談ください。
イースクエアでは、アジアやアフリカ等の途上国・新興国での多数のプロジェクト経験に加え、民間企業でのビジネス経験を有するコンサルタントのノウハウや現地ネットワークをフル活用し、補助金獲得や補助金案件の運用を含めたお客様のニーズに合わせて、海外ビジネス展開をオーダーメイドでご支援しています。グローバルサウス補助金を使った実現可能性調査(FS)、事業立ち上げなどのご支援の実績も多数ございます。
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