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FTSEとは?ESG評価項目とスコアの見方などメソドロジーについて解説

【公開日】 【最終更新日】

ESG(環境・社会・ガバナンス)への対応は、企業価値の向上や投資家との信頼構築に欠かせない要素となっています。なかでも、FTSE RussellのESGレーティングは世界中の機関投資家に採用され、透明性の高いスコアモデルで注目されています。特に日本ではGPIFがFTSEのESG指数を導入したことで、その重要性は一層高まっています。

本記事では、FTSEの概要から評価項目、スコアの見方、改善の鍵までを解説し、自社のESG対応に必要な実践的ヒントをお届けします。

FTSEとは?基本概要と読み方・Russellとの関係

FTSE(Financial Times Stock Exchange)(読み方「フッツィー」)は、英国ロンドン証券取引所グループ(LSEG)の100%子会社FTSE Russellが運営する株価指数のブランドです。1984年にフィナンシャル・タイムズ紙とロンドン証券取引所の共同事業として設立され、2015年には米国のインデックス会社Russell Investmentsとの統合により現在の形となりました。FTSE Russellは、世界的に信頼されるインデックスプロバイダーの一つで、世界の株式や債券を対象とした幅広い指数を提供しています。代表的な指数には「FTSE 100」があり、さらに「FTSE4Good」や「FTSE Blossom」などのESG(環境・社会・ガバナンス)関連インデックスでも広く知られています。

FTSEのESG指数(インデックス)とは-代表的なインデックス紹介

FTSE ESG指数の背景

近年、環境・社会・ガバナンス(ESG)を重視する投資が世界的に拡大し、長期的なリスク管理や企業の持続可能性を評価する重要な指標として注目を集めています。加えて、グローバルな資産運用の多くがインデックス連動型のパッシブ運用へとシフトしている中で、ESG要素を組み込んだ指数(インデックス)の存在感が急速に高まっています。

こうした動きを受けて、FTSEではESG評価をもとに構成銘柄を選定する多様なESG指数を開発・提供しており、その評価は世界中の機関投資家に活用されています。特に、世界最大級の運用資産を誇るGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)もFTSEのESG指数を採用しており、その影響力は極めて大きいものです。企業側にとっても、これらのESGインデックスへの構成銘柄入りは、ESG経営の成果を示す重要なマイルストーンとなりつつあります。

FTSE ESG指数はなぜ注目されているのか

FTSEのESG指数は、信頼性・実用性・社会的影響力の3つの側面から特に注目されています。

1. 国際的に信頼される総合的・体系的なESG評価モデル

FTSE(FTSE Russell)は独自のESGスコアモデルを採用し、企業の環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)を横断的かつ体系的に評価します。評価はすべて企業の公開情報に基づき、各テーマの方針・体制・実行・成果までを総合的に測定。透明性が高く再現性のあるグローバル基準のスコアを提供する点が特長です。

2. パッシブ運用の拡大と親和性の高さ

世界的にインデックス連動型のパッシブ運用が主流となる中、FTSEのESG指数は運用会社や年金基金がESG要素を組み込みやすい設計になっています。実際に日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が採用しており、制度的な信頼性と実用性の両面で評価されています。

3. 企業にとって「目標」となる評価指標

FTSE ESG指数は、一定のESGスコアを満たした企業のみが構成銘柄に選ばれる仕組みです。そのため、インデックス入りは企業のESG経営の成果を示す対外的な証明となり、IR戦略やブランディングに活用されるケースも増えています。

代表的なFTSEのESG指数

FTSE Russellが提供するESG関連のインデックスにはさまざまな種類がありますが、なかでも特に注目されているのが次の2つのシリーズです。

これらの指数は、いずれもFTSE Russell独自のESG評価モデルを用いて企業を分析し、ESGレーティングスコアを算出。そのスコアに基づいて、指数に組み入れる銘柄が選定されます。

FTSE4Good インデックス・シリーズ
FTSE4Goodインデックス・シリーズは、2001年にFTSE(現FTSE Russell)が創設した世界初期のグローバルESG株価指数シリーズです。FTSE RussellのESGスコアで一定の閾値(開発国3.3以上、など)を満たすことが採用条件となり、特定セクターの除外基準(例:武器、たばこなど)が定義されています。 シリーズには、FTSE4Good Global Index、Europe Index、Emerging Indexなど複数の地域別インデックスのほか、ASEAN 5指数や台湾市場向けの指数なども含まれ、多国籍企業や新興国市場のESG対応状況を幅広くカバーしています
FTSE Blossom インデックス・シリーズ
FTSE Blossom インデックス・シリーズは、FTSE Russellが提供するESG株価指数群で、もともとは日本市場を対象に開発されたESGインデックスとして2017年に登場しました。代表的な指数に「FTSE Blossom Japan Index」があり、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG投資に採用したことで注目を集めました。2022年には業種相対評価と気候変動対応を重視した「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」が追加され、2025年からはグローバル版の「FTSE Blossom World Index」も展開されるなど、ESG投資の重要な指標として進化を続けています。

※詳しくは別コラム記事もご参照ください。

FTSEのESG評価とは-ESGレーティングの仕組みと見方

ESGレーティングの見方

FTSEのESGレーティングスコアは、0〜5の範囲で0.1刻みで付与され、スコアが高いほど企業のESG対応が優れていることを示します。さらに、このスコアはESG指数(インデックス)の構成銘柄を選定する際の基準としても活用されており、たとえばFTSE Blossom Japan Indexに新たに採用されるには、ESGレーティングスコアが3.3以上であることが求められます。スコアは企業のESGパフォーマンスの指標であると同時に、インデックス入りの重要な要素でもあります。

ESGレーティングの評価スケジュール

FTSEのESG評価は、年2回(6月・12月)に実施されるインデックス見直しに合わせて更新されますが、各企業の評価は年1回のみです。どちらの時期に評価されるかは、統合報告書やサステナビリティレポートなどの開示資料の発行時期に基づいてFTSEが決定します。日本企業の多くは3月決算であり、各種レポート開示が9月以降になるため、翌年6月に評価されるケースが多いです。また、企業側から評価時期(6月⇔12月)の変更を申し出ることも可能です。

ESGレーティングの評価プロセスは3ステップ

FTSE ESG評価プロセス

STEP
プレ調査(初期評価)
FTSEが公開情報をもとに、各評価指標への適合状況を事前に評価
STEP
企業レビュー期間(2~4週間)
仮評価が企業に通知され、企業は訂正や追加情報をフィードバック
STEP
最終評価
フィードバックをもとにスコアが確定
結果がインデックス構成銘柄選定/見直しに反映

FTSEへのフィードバックプロセス

プレ調査では、企業の公開情報をもとに各評価指標への適合状況が整理され、FTSEから企業へ仮評価が通知されます。その後、2~4週間のレビュー期間中に企業は誤認訂正や補足情報をフィードバック可能です。企業からの意見を受けて最終評価が行われ、最終スコアとして確定します。

FTSEは企業の公開情報のみをもとに評価を行うため、「情報があっても開示していなければ評価されない」ことになります。したがって、仮評価の内容を確認し、正しい情報が反映されていない場合は、レビュー期間中に必ずフィードバックすることが大切です。

なおイースクエアでは、FTSEから届く仮評価内容に基づくスコアシミュレーションや、フィードバック内容の検討支援など、評価の適正化を図るための伴走支援を行っています。初めて評価を受ける企業様や、スコアに疑問を感じているご担当者様は、ぜひ一度ご相談ください。

MSCIなど他ESG評価との比較

FTSE RussellのESG評価の最大の特徴は、評価の透明性が非常に高いことです。企業は、評価された各指標に対して、どの公開情報がスコアの根拠となったかを個別に確認できます。

これにより、「なぜこの項目が低評価なのか?」「どの開示に基づいているのか?」が明確になるため、実務担当者が正確に改善すべきポイントを把握できるのです。

一方、MSCIでは、スコアの根拠となる開示内容が明示されないことが多く、評価の透明性に課題があると言われています。 S&Pの場合は、企業のアンケート回答も評価に含まれるため、回答戦略や記述力によって評価が左右されるリスクも存在します。

FTSEのESGスコア算出メソドロジーを解説

FTSEのESGスコアは、企業の公開情報(有価証券報告書、統合報告書、ガバナンス報告書、Webサイト等)をもとに、最大14のESGテーマに分類された評価項目に基づき算出されます。ただし、14テーマの評価項目(約300項目)がすべての企業に適用されるわけではなく、業種や事業内容に応じて企業ごとに評価対象となるテーマ及び評価項目が選定されます。(平均約200項目)各テーマでの評価項目の充足度に応じて0〜5(0.1刻み)でスコアが付与され、テーマスコアをもとにE・S・Gそれぞれのスコア、最終的に総合スコアが0〜5(0.1刻み)で算出されます。

FTSEのESGテーマ

評価は以下の3カテゴリ・14テーマに分類されます

環境気候変動、生物多様性、水使用、汚染と資源、環境サプライチェーン
社会労働基準、健康と安全、人権と地域社会、顧客責任、社会サプライチェーン
ガバナンスコーポレートガバナンス、腐敗防止、リスクマネジメント、税の透明性

エクスポージャーとスコアの関係

FTSEでは、企業ごとの事業特性や業種に応じて、各ESGテーマに対するリスクの大きさ(=エクスポージャー)が設定されます。これに基づいて、企業ごとに評価対象となるテーマや指標が選定され、スコア算出時の重み付けにも反映されます。つまり、自社にとって重要性の高い課題への対応状況が、ESGスコアに大きな影響を与える仕組みとなっています。

FTSEのESG評価項目とその意義

FTSEのESG評価項目は、方針から体制、パフォーマンスなど網羅的な視点から構成されており、TCFDや国際的なサステナビリティ開示基準と構造的に類似しています。このため、FTSEのESG評価に対応することは、企業にとってグローバルな開示要件への準備・整備にもつながります。さらに、評価は各テーマを横断して総合的かつ体系的に行われるため、単なるスコア取得にとどまらず、ESG経営の基盤構築や開示戦略の土台としても有効です。

FTSEのESGスコア改善のポイント

FTSE RussellのESGスコアを効率的に高めるには、評価の仕組みを理解したうえで計画的に対応することが重要です。

まず、総合スコアを上げるには、自社のエクスポージャー(リスク)が高いテーマで高得点を狙うことが最も効果的です。業種や事業特性によってテーマの重み付けが異なるため、重点分野を見極めて優先的に整備する必要があります。

FTSEの評価は公開情報を根拠としており、優れた取り組みであっても開示されていなければ評価されません。そのため、「当たり前のことでも必ず開示する」という意識を持ち、情報を体系的に整理することがスコア改善の基本です。特に、FTSEの評価項目は総合的かつ網羅的であるため、これに沿った開示を整備することで自社のESG情報全体を体系的に構築できます。

また、年1回のフィードバック期間を有効に使い、見落とされた情報や最新施策を正確に伝えることも欠かせません。

イースクエアでは、実際に評価を得ている他社の開示事例から評価ポイントを抽出し、企業ごとに的確な改善策を提案しています。こうしたアプローチにより、限られたリソースでも効率的にスコアを引き上げることが可能です。

まとめ

FTSEのESGスコアは、企業のESG経営を国際的な視点で「見える化」する仕組みです。評価は公開情報のみを基に行われるため、いかに自社の方針や成果を明確に「見せる」かが重要です。また、FTSEの体系的な評価モデルは、スコア改善に活用するだけでなく、自社の開示や戦略を整理する強力なフレームワークになります。

FTSEへの対応は、単なるスコア対策ではなく、自社のESG戦略を国際基準に高めるチャンスです。自社のESG経営を一段上のレベルへ引き上げる契機として活用されることをお勧めいたします。

イースクエアでは、実際の評価事例から抽出したポイントをもとに、効率的なスコア改善と情報開示の整備を支援しています。

詳しくは以下のページをご参照ください。

【参考】

汪(天海)浩
この記事の監修者
汪(天海)浩記事一覧
博士(経済学) 専門分野:環境・社会会計
大学院で企業のサステナビリティ、非財務情報開示を研究。
2014年より株式会社イースクエアにて、ESG評価対応支援サービスの立ち上げに参画。ESG評価に関する調査・分析、改善提案などの業務に従事し、業種・規模を問わず多数のプロジェクトに携わる。現在は、複数の主要ESG評価機関の評価項目や評価ロジックを体系的に整理・分析し、それらを横断的に捉えたアドバイスを提供する支援モデルの構築・推進を担当。企業が効率的かつ戦略的に評価向上を目指せるよう、プロジェクトの進行管理および監督・監修も行っている。

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