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グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金事業実施完了後のインドでの事業展開の好事例 ~大成工業株式会社(鳥取県)・実装フェーズへの展開~

【公開日】 【最終更新日】

2024年4月掲載の記事「JICA民間連携事業終了後のインドでの事業展開の好事例~大成工業株式会社~」、2025年5月掲載の続編に続き、本記事では、大成工業株式会社によるインド展開の“その後”をご紹介します。

これまで大成工業は、JICA民間連携事業、鳥取県補助金、そしてグローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金を活用しながら、インド市場におけるTaisei Soil System(TSS)技術の普及可能性を段階的に検証してきました。(TSSの詳細については、大成工業株式会社の会社ホームページをご確認ください。)

直近に実施したグローバルサウス未来志向型共創等事業(以下、「GS事業」)では、補助金事業終了後にどのように事業化を具体化していくかが、より明確な形で見えてきました。

今回の成果をひと言でいえば、TSSのインド展開が「有望性の確認」から「実装に向けた具体設計・体制構築」の段階へ進んだことです。

具体的には、インド南東部の都市、チェンナイ周辺での現地企業のCSR資金を活用した公立学校でのTSS設置案件の具体化の検討が始まりました。インドでは、会社法により一定の条件を満たす企業は、CSR事業に資金を支出する義務があり、その支出先を探していた現地企業から日本の関連企業を通じて引き合いがありました。(インドの会社法によるCSR事業への資金支出義務の詳細については、記事「インドのCSR法概要とCSR活動の事例」をご覧ください。)

それに加えて、現地製造・現地調達に向けた部材調査や施工条件の精査も進み、補助金終了後の自走に向けた土台の整備が着実に進んでいます。

CSRを起点に、学校案件の具体化が進んだチェンナイ周辺

GS事業による大きな前進は、チェンナイ周辺での現地企業のCSR資金を活用した公立学校でのTSS設置案件の具体化です。

2025年7月の調査では、引き合いがあった現地企業との協議を通じて、CSR資金を活用したTSS普及の可能性を具体的に検討しました。この協議では、CSR資金の対象は主に公立学校であること、導入にあたっては学校や政府の許可、場合によってはNGO側の認証や輸入ライセンス確認も必要になることなど、制度面の実務条件を整理しました。同時に、日本からコア部材を輸出するだけでは価格が高くなりすぎるため、コストダウンと現地化が不可欠であることも明確になりました。

その後の候補地調査では、複数の学校を比較した結果、チェンナイ市内から約2時間のKancheepuram地区にある公立学校を最も有力な候補地として特定しました。同学校では、既存の女子トイレに対してTSS設置が必要とされ、使用回数や敷地条件を踏まえて設計検討を進めました。一方で、別の学校ではTSSの設置に必要な土地が不足していたり、コスト面で見合わなかったりと、案件化を見送る判断をしました。こうした比較検討には時間を要したものの、実装可能性の高い案件に絞り込むという点で非常に重要であったと考えます。

さらに9月以降の調査では、TSS設置候補の公立学校におけるシステム構成、レベル測量、雨水対策、維持管理条件まで踏み込んだ設計協議を行いました。セプティックタンク、リレータンク、Tafgard(浸潤散水処理資材)を用いた土壌処理層、点検タンクという基本構成を整理し、現地施工業者との間で、施工方法や使用資材、監視・点検のあり方まで詰めました。これにより、TSSの現地展開は、概念提案から実施設計に近いレベルの具体化へと進みました。

「現地化」が事業化のカギであることが、より明確に

今回の一連の調査で、事業化の最大の鍵が「現地化」にあることが、より一層明確になりました。2025年9月の第2回現地調査では、Tafgardを構成するコア部材の現地調達候補先企業を整理しましたが、それらは日本企業の特殊技術に依存しており、第三国での製造・販売が困難である可能性が高いことを確認しました。そのため、インド国内ではTafgardのコア部材の代替資材の調査と、不透水シート、通気性土壌、配管、ろ材、防食テープなど、その他の部材について具体的な調達先の探索を開始しました。

その後、2025年11月の調査で、不透水シート、通気性土壌、配管、ろ材の現地調達先を特定することができ、防食テープなどの一般的な部材は現地ECサイトで調達できることを確認しました。これまでの調査の結果、インドでは調達が困難なTafgardのコア技術は日本側で保持しながら、周辺資材と施工を現地化するハイブリッド型モデルが現実的であると判断しました。今後は、現地でTafgardのコア部材の代替品が特定できるまでは、コア部材は日本から輸入し、その他資材はインド国内で調達することでコスト削減を図る方針となりました。

また、コスト削減の取り組みが単なる価格交渉ではなく、設計や資材構成そのものの見直しと一体で進められていることも重要です。今回の公立学校でのTSS設置案件では、既存地形の高低差を活用して掘削量を減らす検討を行い、タンク構造や資材選定も現地施工性と維持管理性を踏まえて調整しました。補助金終了後に継続的に案件を展開していくには、こうした設計・施工・調達の一体最適化が不可欠です。

現地パートナーとの役割分担が、案件形成を前に進めた

海外展開では、現地に持ち込む製品や技術だけでなく「誰と進めるか」が極めて重要です。GS事業では、引き合い先の現地企業がCSR案件の実施主体となり、現地施工会社が施工を担い、大成工業が設計・コア技術・重要工程の監督を担うという役割分担となりました。2025年11月の協議では、現地業者が基礎準備を担当し、重要工程では日本側が現場を訪問して施工監督する計画が固まり、単なる代理店モデルではなく、実務レベルで動くことができる協業体制の構築が進んでいます。

2026年12月の調査ではさらに、CSR案件実施主体の現地企業が現地施工会社と直接契約し、資材を大成工業から別契約で購入するスキームや、教育委員会への承認申請に向けた役割分担も整理しました。具体的には、現地企業が教育委員会向けのカバーレターを作成し、大成工業が添付資料や図面を準備し、案件形成に必要な事務・制度対応まで含め、事業化に向けた大きな前進がありました。

課題への柔軟な対応により事業化に向けて大きく前進

もちろん、事業化は一直線には進みません。TSS設置候補の公立学校では、GS事業開始時点で知らされていなかった州政府主導のミニスタジアム建設計画が進んでおり、当初想定していたTSS設置予定地の一部が使えなくなるという新たな問題が生じました。2026年1月時点では、現地側の進捗報告により、セプティックタンクや土壌処理部の敷地の確保が難しくなり、利用者数の再確認や設計縮小の必要性が生じました。さらに、同年1月に実施した現場の再確認では、各種条件の変更により設計が複雑になり、工事が難航する可能性が高いため、同校は設置に不向きであるとの結論に至りました。

そのため、スタジアム工事業者から近隣の別の公立学校を代替候補地として提案してもらい、実際に同学校の現地視察を行いました。同学校では、11・12年生向け新校舎にトイレが未設置であり、新たなトイレ・浄化槽の整備ニーズが確認できました。さらに、CSR実施主体の現地企業は、予算次第では同学校にTSSとトイレを併設する案に関心を示しました。その結果、本プロジェクトは、現場の制約に応じて柔軟に設置候補を見直し、適応力を持って前進させることができました。

チェンナイだけでなく、プリーでも新たな展開可能性が見えてきた

今回の事業展開は、チェンナイ周辺にとどまりません。2025年10月の調査では、インド東部のオリッサ州政府との面談に加え、同州内にあるプリー市との協議が実施されました。プリー市側は、TSSを公共利用に適した廉価で魅力的な技術として評価し、ビーチ沿いの公衆トイレを対象としたパイロットプロジェクトを提案しています。候補地の共同調査、利用者数データの収集、詳細設計と費用見積もり、1年間のモニタリングを経た後、他地点への拡張展開も視野に入れられており、自治体主導の横展開可能性が見えてきました。

現地視察では、様々なビーチの公衆トイレや、故障した汚水処理施設から汚水が海へ流出している状況も確認しました。こうした現場の状況調査により、TSSのような分散型・低コスト型の処理技術に対する現地ニーズが大きいことが確認できました。学校案件がCSR需要の起点であるのに対し、プリー市の案件は自治体需要の起点であり、今後の事業ポートフォリオを広げる意味でも重要な示唆があったと言えます。

補助金終了後に見えてきた、インド展開の本質

GS事業結果を通じて見えてきたのは、補助金事業の価値は「調査を実施したこと」そのものではなく、その後に案件を組み立てるための具体的な判断材料と関係性を獲得できたことにあるという点です。大成工業の事例では、JICA民間連携事業での実績をもとに、チェンナイ周辺でCSR案件を具体化し、現地製造・現地調達の可能性を探り、さらにプリー市での公共案件につなげるという、複数の展開ルートが形成されつつあります。

一方で、現地化の難しさも明らかになりました。ライセンス制約、部材調達、関税、施工条件、学校・教育委員会・州政府の承認、さらには現地の政府工事との干渉など、インドでの事業化には多層的なハードルがあります。それでも、これらを一つひとつ整理しながら、設計の見直しや候補地の再選定を進めていること自体が、補助金後の事業開発として非常に価値ある成果です。

まとめ

大成工業のインド展開は、JICA民間連携事業、鳥取県補助金、グローバルサウス補助金を活用しながら、段階的に事業化確度を高めてきた好事例です。GS事業では、チェンナイ周辺でのCSR案件形成、現地資材調達と施工体制の具体化、プリー市での公共案件可能性の拡大など、補助金終了後の展開に向けた重要な前進がありました。

補助金活用型の海外展開では、採択や調査完了がゴールになりがちですが、本当に重要なのは、その後に「誰と、どこで、どのように事業を始めるか」を具体化できるかどうかだと考えます。大成工業の事例は、まさにその問いに対する実践的な答えを示していると考えます。インド市場、そしてグローバルサウス市場での事業展開を検討する企業にとって、非常に示唆に富む事例といえるでしょう。

イースクエアは海外展開・進出に係る補助・助成金申請支援も行っており、これまでに多くの支援実績があります。ご興味がある方は、以下よりお気軽にお問い合わせください。 

田村 賢一
この記事の監修者
田村 賢一記事一覧
2005年よりデロイト トーマツ グループにてCSR戦略、環境マネジメント、中小企業向け経営コンサルティング支援に従事。2010年イースクエア参画後はCSR・サステナビリティ事業に従事し、企業の戦略策定、情報開示、社内浸透などを支援。2015年に取締役就任後は海外展開・事業開発支援を主導し、中堅・中小企業向けに公的資金の活用、人財育成、新規事業開発等を支援。近年は中堅・中小企業の海外展開支援に継続して取り組んでおり、サステナビリティ・海外展開関連の講演活動も多数行っている。

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