途上国・新興国に海外展開をしようとしている企業に注目されているのが、経済産業省が実施している「グローバルサウス未来志向型共創等事業(通称:グローバルサウス補助金)」です。2025年9月に令和6年度補正予算 グローバルサウス未来志向型共創等事業 第2回公募に向けた応募ガイドをアップしましたが、その後の最新動向と、令和7年度補正予算 グローバルサウス未来志向型共創等事業(小規模実証・FS事業) 第1回公募に向けた準備ポイントをお伝えします。
グローバルサウス諸国における社会課題の解決と、日本企業の海外展開・新市場開拓を後押しする支援策として注目を集めている「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」。令和6年度補正予算では第1回・第2回公募が実施され、多くの企業・団体が応募しました。令和7年度補正予算については、2026年3月10日時点で事業者向け第1回公募の開始日はまだ公表されていませんが、制度の立ち上がり自体はすでに進んでいます。
本記事では、令和6年度補正予算の採択結果も振り返りながら、令和7年度第1回公募に向けて押さえておきたいポイントを整理します。特に今回は、令和6年度補正予算第2回公募の採択案件にどのような傾向が見られたかに注目し、次回公募に向けた示唆もあわせて整理します。
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まず押さえたい最新状況
2026年1月22日、経済産業省は令和7年度補正予算「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金(小規模実証・FS事業)」の執行団体公募を開始しました。ここで募集されたのは、事業に応募する企業そのものではなく、今後の公募運営や審査、進捗管理などを担う事務局です。
その後、2026年2月20日には、執行団体としてTOPPAN株式会社が採択予定先となったことが公表されました。令和6年度補正予算でも同社が事務局を担っていたことから、令和7年度補正予算についても、前年度に近い運営スキームで進む可能性が高いと見られます。
つまり、現時点は「まだ応募開始前」ではあるものの、制度の立ち上がりはすでに始まっており、企業としては公募開始を待って動くのではなく、いまのうちから案件形成を進めておくべき段階に入っていると言えます。
前回公募の結果から見えるもの
応募件数と採択率
令和6年度補正予算では、第1回公募が2025年5月に実施され、第2回公募は同年11月に実施されました。第1回公募では144件の応募に対して71件が採択(採択率約49%)、第2回公募では234件の応募に対して75件(採択率32%)が採択されています。
この数字から見えてくるのは、本事業が相応に大きな注目を集めており、かつ、回を追うごとに競争が強まっているということです。特に第2回公募では応募件数が大きく増加しており、単に「海外展開の構想がある」というだけでは採択に至りにくく、政策との整合性、事業の実現可能性、社会課題解決との接続、日本側の裨益の明確さがより厳しく問われたと考えられます。
令和7年度第1回公募においても、同様に比較審査となる可能性が高く、早期から論点整理を進めておくことが重要です。
対象になりやすい案件
本事業は、グローバルサウス諸国における社会課題の解決を通じて、日本企業の海外展開、新市場獲得、サプライチェーン強靱化、国内産業の活性化につなげることを目的としています。
対象となるのは、主に以下のような案件です。
- 現地課題の把握や事業成立性を検証するFS(Feasibility Study)
- 現地での導入可能性を検証する小規模実証
- GX、DX、インフラ、資源循環、農業、医療、教育、防災など、社会課題との接続が明確なテーマ
- 相手国での裨益だけでなく、日本国内への波及効果も説明できる案件
実際にこれまでの採択案件を見ても、再生可能エネルギー、農業高度化、衛星データ活用、水処理、医療アクセス、教育DX、バイオ炭、資源循環といった幅広い分野が対象となっており、分野の間口は比較的広い一方で、政策目的にどれだけ正面から応えているかが重要であることが分かります。
令和6年度補正予算第2回採択案件から見える傾向
令和6年度補正予算の第2回公募では、75件の採択案件が公表されています。採択一覧を俯瞰すると、全体として単なる「海外販路開拓型」よりも、GX、気候変動適応、防災レジリエンス、資源循環、デジタル実装、人材育成を組み合わせた案件が目立ちます。第1回に比べ、第2回のほうが政策目的との接続がより明確な案件が多く並んでいる印象です。
たとえば、防災・レジリエンス分野では、キルギスでの衛星データとAI・シミュレーションを組み合わせた洪水・気候変動予測の実証や、同じくキルギスでの小型衛星による災害・水環境モニタリング技術の導入可能性調査が採択されています。これらは単なる技術導入ではなく、気候変動適応やインフラ強靱化という政策課題に正面から応える案件です。
GX・脱炭素の観点でも、第2回は特徴がはっきりしています。インドの鉄道物流GX化、ベトナムでの再生型農業や代替燃料供給体制、東南アジア複数国を対象としたバイオ炭関連調査、ブラジルでの養豚業の脱炭素化・デジタル化など、環境価値の創出とサプライチェーン再設計を同時に狙う案件が多く見られます。環境負荷低減だけでなく、日本企業側の調達、輸出、GX市場参入、報告対応といった実務的なリターンが意識されている点も特徴です。
また、第2回では「社会課題解決×デジタル」型の案件も非常に目立ちました。インド学生向けAIコーチ、教育分野でのAI評価・動画自動生成の活用、遠隔病理の実証、農業協同組合向け共通デジタルプラットフォームなど、AIやデータ、遠隔技術を活用して教育・医療・農業といった基礎的分野の課題解決を図る案件が採択されています。第1回にもDX関連案件はありましたが、第2回ではより一歩進んで、デジタル実装そのものを事業モデルとして成立させる視点が強まっているように見えます。
さらに注目したいのは、人材育成や制度・標準形成まで視野に入れた案件が採択されている点です。たとえば、VR技術を活用した自動車整備士訓練学校の実証や、水資源分野での標準化を意識した取り組みなど、単発の導入で終わらず、中長期的な市場形成や制度浸透につながる構想が評価されていると考えられます。これは、単なるPoCよりも、事業化後の広がりを描ける案件が強いことを示唆しています。
地域面でも、第2回は示唆に富んでいます。インド、ベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピンといった主要アジア市場に加え、キルギス、タジキスタン、モンゴル、ケニア、ザンビア、ナミビア、ボツワナ、アンゴラ、フィジーなど、中央アジア、アフリカ、大洋州まで採択先が広がっている点が印象的です。これは、制度名どおり「グローバルサウス」を広く捉え、単に市場規模だけでなく、資源、インフラ、レジリエンス、社会実装の観点から戦略性の高い地域が対象になっていることを示しています。
こうした第2回採択案件の傾向から逆算すると、令和7年度第1回公募で有望なのは、単に「現地ニーズがある」案件ではなく、相手国の社会課題解決に資することが明確で、GX/DX/レジリエンス/人材育成のいずれか、あるいは複数の政策テーマと接続し、日本側にも新市場形成、サプライチェーン強靱化、技術還流といった裨益が説明できる案件だと言えそうです。特に、導入後の横展開や制度化まで見据えた構想は、引き続き強いと考えられます。
採択に向けて意識したい視点
本事業では、単に「海外で売れそうか」だけではなく、少なくとも次の二つの視点が強く意識されます。
一つは、相手国への裨益です。現地の社会課題や産業課題に対して、どのような価値を提供できるのか。たとえば、インフラ不足の解消、脱炭素化、医療・教育アクセスの改善、農業生産性向上、人材育成などがこれにあたります。
もう一つは、日本への裨益です。日本企業にとっての売上や収益機会だけでなく、国内産業への波及、技術高度化、新たな市場形成、供給網の多角化、経済安全保障への貢献などが問われます。
つまり、採択されやすい案件とは、
「相手国の社会課題解決」と「日本の産業・経済へのリターン」が一つのストーリーとしてつながっている案件だと言えます。
この観点から考えると、応募書類の段階で次のような点をどこまで具体化できるかが重要です。
- なぜその国・地域で取り組む必要があるのか
- どの課題に対して、どの技術・サービスで応えるのか
- 現地パートナーは誰で、どう役割分担するのか
- FS後、実証後にどのように事業化へつなげるのか
- 日本側にどのような経済的・戦略的メリットがあるのか
令和7年度補正予算に向け今のうちに準備しておきたいこと
令和7年度補正予算の第1回公募開始を待つ間に、企業が進めておきたい準備はいくつかあります。
まず重要なのは、案件の骨格を言語化することです。制度趣旨に沿った案件であっても、構想が頭の中にあるだけでは審査では伝わりません。相手国の課題、日本側の強み、想定する事業スキーム、現地パートナー、事業化までの道筋を整理し、第三者が見ても理解できる形に落とし込む必要があります。
次に、裨益をできるだけ定量化することです。たとえば、対象人口、CO2削減見込み、調達先多角化の効果、コスト削減、将来売上、国内投資や雇用への波及など、比較審査で評価されやすい指標を早めに整理しておくと、申請書の説得力が高まります。
また、現地パートナーとの調整も欠かせません。実証場所の確保、現地でのオペレーション、規制対応、データ取得、将来の商用展開主体など、実務面の整理が甘いと、実現可能性に対する評価を落としかねません。
さらに、申請実務の面でも、GビズIDやJグランツの利用有無、社内決裁、財務書類・会社情報の準備など、事前に整えておける事項は少なくありません。公募開始後は短期間での対応が求められる可能性が高いため、早めの準備が有効です。
まとめ
令和6年度補正予算の採択結果を踏まえると、「グローバルサウス未来志向型共創等事業(小規模実証・FS事業)」は、引き続き日本企業にとって有力な海外展開支援制度の一つです。
令和7年度補正予算については、すでに執行団体の選定が進んでおり、今後、事業者向け第1回公募の開始が焦点となります。制度全体としては大きな予算枠の中に位置づけられ、個別案件でもFS最大1億円、小規模実証最大5億円という支援が見込まれる点は、大きな魅力です。
一方で、競争は引き続き厳しくなることが予想されます。だからこそ、募集開始を待ってから慌てて検討するのではなく、いまの段階から、政策との整合性、相手国裨益、日本裨益、事業化可能性を整理しておくことが、採択可能性を高めるうえで重要になります。
イースクエアでは、グローバルサウス案件の構想整理、申請方針の検討、事業計画書作成、採択後の案件実施支援まで対応しています。ご関心のある方は、お気軽にご相談ください。
イースクエアの支援メニュー
イースクエアは、これまでグローバルサウス補助金を含め、多数の採択実績を持ち、補助金申請から事業実施・報告・清算までワンストップで伴走してきました。特に海外展開に伴う「現地調査」「パートナー連携」「制度対応」の経験が豊富であり、企業が自力では難しい部分を手厚くサポートします。
イースクエアでは以下の案件を含め、複数の案件をご支援しています。
株式会社トロムソ
「ベトナム国/バイオ炭活用による農業の生産性向上と低炭素化の実証事業」(大型実証・ASEAN)
株式会社木村鋳造所
「インド/鋳造要素技術イノベーションを中心とした鋳造CoEおよび発展的CoE形成可能性調査事業」(FS事業)
公募資料作成支援
- 採択案件の知見を活かした申請書ドラフトレビュー
- 公募要領の審査基準に沿った事業計画構成の整理
- 過去採択案件の成功要因を取り入れたブラッシュアップ
予算立案・コスト計算
- 補助率を踏まえた最適な費用配分の設計
- 人件費・外注費・機械設備費など区分の整理と適正化
- 精算時に不備が生じないよう会計処理のポイントを事前反映
調査計画・現地調査支援
- 現地ニーズ調査の設計とデータ収集手法の策定
- 現地企業・大学・政府機関とのパートナー探索と連携支援
- 調査渡航の企画、通訳・調査設計、現地政府との調整サポート
報告書作成・清算サポート
- 実施報告書・成果報告書の効率的な作成支援
- 経費精算・証憑整理のサポートと不備防止対応
- 長期事業の進捗報告や中間報告書作成の支援
全体進行管理
- 公募開始から採択、事業完了までのスケジュール設計とタスク管理
- 経営層・実務担当・現地パートナーをつなぐプロジェクトマネジメント支援
イースクエアでは、アジアやアフリカ等の途上国・新興国での多数のプロジェクト経験に加え、様々な民間企業でのビジネス経験を有するコンサルタントのノウハウや現地ネットワークをフル活用し、補助金獲得や補助金案件の運用を含めたお客様のニーズに合わせて、オーダーメイドで海外ビジネス展開をご支援しています。グローバルサウス補助金を使ったご支援の実績も複数ございます。
ご興味がある方はお気軽に以下よりお問い合わせください。

