国連開発計画(UNDP)は、「人権対応は競争力を損なう」とする長年の議論の妥当性を分析する報告書「人権か競争力か:偽りのジレンマ?(仮訳)(Human Rights vs. Competitiveness: A False Dilemma?)」を公表した。同報告書は企業の人権への取り組みが財務パフォーマンスに及ぼす影響を検証するもので、世界235社を対象に5年間の定量分析を実施し、人権に関する方針やプロセス、実務を強化しても財務面への悪影響は確認されないと結論づけた。
調査では2つの主要な結果が示された。1つ目は、人権対応の改善とその後の資産効率(ROA)向上との間に有意な正の関係が見られた点である。サプライチェーンの強靱化や労働生産性の向上などのデュー・ディリジェンス強化が、時間の経過とともに初期コストを上回ると分析している。2つ目は、社会的支出は投資家に嫌われるという仮説が否定された点である。人権への取り組みを強化しても市場評価は低下せず、むしろポジティブな傾向が確認された。
今回の調査は、デュー・ディリジェンス体制の構築や従業員研修、ステークホルダーとの関与など一定の投資は必要であるものの、人権対応を強化した企業には明確な財務的メリットが生じることを示した。競争力への影響を懸念することが企業の人権への取り組みの障壁となってきたが、今回の結果は、人権対応を「防御的なリスク管理」から「積極的なビジネス機会」として捉え直す転換点になり得る。
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