2017年1月16日

貧困撲滅に取り組む国際NGOオックスファムは、ダボス会議に先立ち、貧富の格差に関する報告書「99%のための経済(An Economy for the 99%)」を発表した。同報告書によると、貧富の格差はこれまで考えられていたより大きく、最富裕層トップ8人の資産と世界人口の貧しい半分に当たる36億人の資産がほぼ同額であるという。前年のデータでは上位62人が下半分と同額の資産を保有するとしていたが、インドや中国などに関してデータの精度が高まったことから、下位半分の保有資産が過去の推定よりはるかに少ないことが判明した。世界の富裕層トップ1%が保有する資産は、残る99%の保有資産合計より多い。また、1988と2011年との間で、最貧困層10%の収入は65ドルしか上がっていないが、最富裕層1%の収入はその182倍に当たる11,800ドル増加している。

同報告書は、富裕層への富の集中が、貧困撲滅の取り組み推進の支障となっていると批判。貧富の格差縮小により7億人が貧困から逃れることができるとしている。貧富の格差が危機的状況に達している原因として、企業のビジネスモデルが冨の所有者(株主など)や上級役員への利益還元を重視する傾向が強まり、そのために税金逃れや労働者の賃金の削減、生産者締め付けなどが行われていることを指摘している。同報告書は、あらゆる人が取り残されずにその基本的人権が保障される「ヒューマン・エコノミー(人間らしい経済)」の実現手段として、以下を呼びかけている。
・政府間の協力により、企業の租税回避を防止する
・企業が役員や株主だけでなく従業員や地域社会のために行動するよう、政府から働きかける
・富裕層への課税により、医療、教育、雇用創出の資金を生み出す
・女性の社会進出の障害となっている、教育機会の欠如、無償介護作業の負担などの問題に取り組む