2023年1月10日

英人権NGOのノウ・ザ・チェーン(KnowTheChain)は、「2022 Information and Communications Technology Benchmark」を発表した。これは情報通信技術(ICT)業界の強制労働問題への対応状況を評価しランキングしたもので、世界上位60社が対象。評価項目は「コミットメントとガバナンス」「トレーサビリティとリスクアセスメント」「調達慣行」「人材採用」「労働者の声」「モニタリング」「救済措置」の7つで、自社対応のみでなく、サプライチェーンでの取り組みも重要視される。

ランキングは、63/100点を獲得したヒューレット・パッカード・エンタープライズが首位、2位以降はインテル、シスコシステムズ、アップル、HPと続き、米国企業が上位5位を独占した。一方、全体の中央値は14/100点に留まり、ほとんどの企業が強制労働問題に対して十分な対応を行えていないことが明らかになった。

ICT業界の年間収益は4兆米ドルを超え、サプライチェーンがグローバルに拡大するなかで、強制労働や労働権侵害のリスクも高まっている。KnowTheChainは、これらのリスクは企業の風評、事業運営、財務等のリスクと強く結びついており、見過ごしていると社会の脆弱性にもつながると警告。例えば、英国政府は2016-17年の強制労働の搾取による社会的損失が、英国だけで2億5,910万英国ポンド(約410億円)に上ると推定している。また、国際労働機関(ILO)の試算によると、労働関連の病気や怪我が世界経済に与える年間コストは1兆2,500億米ドルという驚異的な数字になり、これはGDPの約4%に相当する。

世界中で規制の強化やESG基準の策定が進み、企業のサプライチェーンの透明性と説明責任が求められるなか、これらの要件とコミットメントを達成していないことを示す今回の結果は、投資家により慎重な精査を促すことになるだろう。