2017年2月20日

大手国際金融グループのHSBCは、パーム油業界企業への資金提供における、森林破壊ゼロ、泥炭地ゼロ、搾取ゼロの方針(NDPE: No Deforestation, No Peat and No Exploitation)を発表した。

環境NGOグリーンピースの調査により、HSBCとインドネシアの森林を大規模に破壊しようとしている企業との関連が明らかにされ、その結果、HSBCに対して方針変更を求める大規模なキャンペーンが行われていた。HSBCの3万人の顧客を含む20万人以上の署名が集まったほか、数万人が直接CEOにe-mailを送ったり、オーストラリア、フランス、英国のHSBC店舗前ではキャンペーン活動が行われたりしていた。

HSBCは、2004年にからパーム油業界にサステナビリティの基準を適用したのち、2014年には顧客企業に外部認証を受ける要件を課して漸進的に基準を高めてきていた。今回はグリーンピースから、高炭素ストック (HCS:high carbon stock)の森林と泥炭地を守る基準を設けることについての要望を受け、さらに踏み込んだ方針に転換することとした。

新しい方針では、資金提供先企業に対して、2017年6月末までに自然林と泥炭地を保護する方針を策定すること、そしてプランテーションの新規開発前に対象地域の森林と泥炭地を特定し保護すること、2018年12月末までにNDPEに関する外部評価を実施することを求めている。

金融機関を監視するNGOのバンクトラックによれば、インドネシアの森林破壊の割合はブラジルを超える。昨年、オランウータンは、国際自然保護連合(IUCN)による絶滅危惧種の指定が絶滅危惧IB類(endangered)から絶滅危惧IA類(critically endangered)に引き上げられた。また、東南アジア全体で、パーム油プランテーション開発に際して森林を焼き、泥炭地を乾燥させようとして発生する焼き畑の煙が原因で早死にする人が2015年には10万人にのぼったとみられる。

NDPE方針について今後、注目されるのは、パプアニューギニアの広範囲の森林を今まさに開拓しようとしている韓国複合企業POSCO Daewooへの対応である。グリーンピースの調査によれば、HSBC、BNPパリバ、スタンダードチャータードを含む13銀行は、過去5年間のPOSCO Daewoo関連企業に対し、およそ36億米ドルの融資と50億米ドル以上のボンドの資金提供を行ったとしている。