世界不平等データベース(World Inequality Database: WID)は、「世界不平等レポート2026(仮訳)(World Inequality Report 2026)」を公開した。気候、ジェンダー不平等、人的資本へのアクセス格差、国際金融システムの非対称性、民主主義を揺さぶる地域間格差といった論点を掘り下げている。全8章からなり、200人超の研究者による最新データに基づく歴史的・多面的分析に加え、主要指標を比較できる40の国別シートや、最低資産税、不平等に関する独立パネル設置などの政策提案の背景もまとめた。
主な分析結果は以下の通りである。
- 教育投資の格差が、機会の不平等となり、将来の結果の不平等を助長している。1人当たりの教育支出は、サハラ以南アフリカの200ユーロ(購買力平価(PPP))に対し、欧州では7,400ユーロ、北米・オセアニアでは9,000ユーロと40倍を超える。
- 富の分配は偏っており、上位0.001%(6万人未満の富裕層)が、世界人口全体の下位半数の資産の3倍を保有、そしてほぼ全地域で上位1%が下位90%を合わせた資産を上回る資産を持つ。
- 国際金融では毎年世界のGDPの約1%が、貧しい国から富裕国へ純所得移転として流出しており、その規模は、世界の開発援助額の約3倍に相当する。
- ジェンダー賃金格差は依然として続いており、無償労働を含めると女性の時間当たり賃金は男性の32%まで低下する。
- 炭素排出量は資本保有に大きく関連しており、富裕層は投資活動を通じて排出量を増やしている。民間資本保有に伴う排出は世界人口の下位50%が3%であるのに対し、上位10%は77%を占める。
- 西側民主主義国では、従来の階級社会に基づく所得と教育による政治的分断が崩れ、高学歴層が左派寄りとなる一方、高所得層は右派寄りにとどまるという分断が進み、再分配を支える幅広い支持のまとまりが作りにくくなっている。
- 税制と所得移転は公共財の財源確保と不平等の縮小に有効な手段だが、超富裕層では累進性が崩壊しており、これは税の公平性を損なうだけでなく、教育・医療・気候対策の社会の財源を奪う。


