世界資源研究所(WRI)は、世界の大手企業約700社が掲げるサプライチェーンに関する1,000件以上のサステナビリティ目標を調査した。その結果多くの企業がサプライチェーンにおける気候変動や自然保護の目標を設定している一方で、「人」に焦点を当てた目標を掲げる企業は12%にとどまり、サプライチェーン上の労働環境の改善や人材育成を具体的に目標として掲げている企業は3%未満に過ぎないという。
本調査によると、「人」に焦点を当てたサプライチェーン目標には、労働環境や安全性の向上、リスキリングや起業、教育への投資、労働者や地域社会の福祉向上、サプライヤーの多様性拡大などが含まれる。こうした取り組みは労働者の健康や生活の質を高めるだけでなく、サプライチェーン全体のレジリエンス強化にもつながるとしている。
また、本調査では大企業のサプライチェーン目標の約90%が、小規模サプライヤーに対しコスト圧力を考慮せず一方的にサステナビリティ基準を課していることが明らかになった。大手企業には、監査やコンプライアンスのみに依拠するのではなく、設備投資や人材育成といった具体的課題を共有し、支援を組み込んだ協働型の枠組みに転換すべきであり、一次サプライヤーのさらに先にいる事業者や労働者が直面する課題にも目を向け、技術支援や契約の工夫を通じて移行を促す姿勢が求められている。
WRIは、多くの企業において環境負荷の80 – 90%がサプライヤーの採掘や生産工程に起因するため、大企業がサプライチェーン上の労働者や地域社会への影響を考慮しなければ、サステナビリティ目標の達成は困難になると指摘。これらのサプライヤーと労働者のニーズに対応することが不可欠だと強調した。

