企業に必要な視点: 5つの経営資本
経営は、限られた資源をやりくりし、その中から新しい付加価値を生み出すという一連の過程(プロセス)です。これまでは、「人」、「モノ」、「金」そして「情報」を加えた4つの資源や資本のやりくりが経営だと言われてきました。ここでいう「モノ」とは、「技術」と置き換えられる場合もありますが、いずれにしても、4つの要素は、ある程度まで代替が可能と考えられてきました。
しかし、これだけで、経営は本当に成り立つのでしょうか。
この4つの経営資源のなかには、重要な要素が含まれていません。それは、「自然資本」です。
世界人口が少なく、資源も無尽蔵にあると思われていた時代に、資源や「自然資本」がタダ同然に扱われてきたことは仕方のないことかもしれません。地球の許容能力は、無限にさえ感じられ、限られた資源のやりくりというよりは、とにかく資源を確保すればことは済むというのが、これまでの資本主義の根本的な考え方でした。
しかし今、この考え方を揺るがす出来事が起きています。世界の人口が急速に増加し、物質的に豊かな生活が先進国を中心に広まるにつれ、それまでは無尽蔵にあると思われていた資源も、有限だということが見えてきたのです。そして、資源だけでなく、私たちの経済活動を支えている生態系、つまり正常に働く自然のシステムもさまざまな圧力に耐え切れず、危機的な状況に陥っていることが確認されています。
企業の経営者にとって、この現実は新たな挑戦を意味します。「人」、「モノ」、「金」、「情報」に加えて、5つめの重要かつ有限な経営資源として、「自然資本」の扱いにも注意を払う必要性がでてきたのです。
また、これまで紹介した5つの経営資源、「人」、「モノ」、「金」、「情報」、「自然資本」が、同じような位置付けと重要性があるように並べられてきました。しかし、これは本当に正しいのでしょうか。企業経営を根本的に支え、最終的には代替不可能なものとは何なのでしょうか。その答えは明らかです。
天然資源があること、そして自然の生態系が崩壊しないことは、どの企業経営においても大前提となります。そして、もう一つ、これまでの経済の仕組みのなかで軽視されてきたのは、「人」の要素です。工業時代においては、「人」も簡単に「代替」できる経営資源だったかもしれません。しかし、情報時代においては、「人」という資源こそ経営に大差をつける最大の要因の一つなのです。
このような視点から経営資源をもう一度基本から見直してみると、さきほどとは違う構図がみえてきます。私たちの活動は、自然資本によって支えられています。自然資本がすべての基盤になっています。そして、「モノ」、「金」、「情報」を健全かつ持続的に管理・活用するためには、「人」という強い支えが不可欠です。そうしてはじめて長期的に持続する価値創造が可能となります。
経済価値を生み出しつつ、社会価値を向上させ、環境の価値を守りもしくは蘇生させること。この考え方は、長期にわたって持続する価値創造の基本であると同時に、真のCSRの実践であると考えます。しかし、これは責任として行うものだけでなく、新しい革新と創造性を引き出す考え方でもあります。
→ 持続可能な企業経営に向けて